教育

孫たちにキュウリの話をするトルストイ [2017年03月03日(金)]

本学の創立者記念講堂内の学園記念室に、下の写真のような銅製の像があります。特に題名はついていないのですが、孫達にキュウリの話をするトルストイの写真をもとに、ロシアで制作され、本学に寄贈されたものではないかと思います。

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レフ・トルストイは、とても子ども好きで、どんなに長い時間でも子どもと話をしていたそうです。子どもたちが特に好きだった話の一つが、キュウリの話でした。以下のお話は田中泰子著「L.トルストイとキュウリの話」『カスチョール 31』(2013)を参考にしました。

 あるとき男の子が畑で小ちゃな小ちゃなキュウリを見つけました。男の子は、それをパクッと一口で食べてしまいました。(ここでトルストイが本当にキュウリを噛んでいるようにポリツ、ポリツ、パリツと音を立てると、孫達は本当にキュウリを食べているのかと不思議そうな顔になったのだそうです。そこでトルストイが口の中のキュウリをゴクリと飲み込む音を出すと、子どもは本物のキュウリだ!と喜びます)さて、男の子がもっと先に歩くと、今度はもう少し大きなキュウリを見つけました。(お話の中の男の子が次々と少しずつ大きなキュウリを見つける度に、トルストイはその大きさを両手の指と指の間隔を広げながら示し、また、あたかもその男の子がキュウリを食べているように音を立てながら、口をモゴモゴさせます)男の子は、食べても食べて次にはもっと大きなキュウリを見つけて、(4本目のキュウリは90センチの大きさに、7本目はその男の子の大きさ位までになってしまします)とうとう畑のキュウリは全部なくなってしまいました。

孫達は、おじいちゃんのお話と、キュウリを食べる音と、キュウリが大きくなりすぎて、とうとう最後には指と指の間隔でその大きさを示すことが出来なくなってしまったことが面白くて、お話が終わった後も、家族や出合った人みんなに身振り手振りで、キュウリのお話をしたそうです。おじいちゃんがやったようにキュウリを噛む音をまねしようと、頬を膨らませ、ポリツ、ガリツとやってみるのですが、とうとうおじいちゃんのようにはうまくはできなかったそうです。

田中泰子氏によれば、アレクセイ・セルギエンコ著『L.トルストイはどのようにキュウリの話を語ったか』(1907)という小冊子で、セルギエンコ氏は、「どうしてこの話が子ども達に気に入られたのだろう?それはトルストイの話し方がとても面白かったからだ。(中略) つまり、何でもないような、つまらない話でも意味があるということだ。トルストイはいつも言っていた。真面目な大作だけでなく、どんな話や遊び歌でも、それを聞いた子どもたちが楽しげで気持ちよさそうにしていたらそれは役に立ったということだ、と。」と書いています。

2020年度から小学校3,4年生で英語活動が導入され、5、6年生は正課としての英語授業が始まります。英語の導入期に、子ども達がこんな風に英語のお話を聞くことが出来るといいですね。

ユメミルミズ [2017年01月20日(金)]

 昭和女子大学オリジナルのミネラルウォーターがあるのを知っていますか。名前は『ユメミルミズ』。500ミリリットル、1本90円です。第1弾には、夢みる女の子と空を見上げて夢見る海の水をイメージしたラベルがついていました。これは環境デザイン学科の学生がデザインしたものです。一人一人の夢の実現を応援したいという気持ちを込めてデザインしてくれました。
 
(以前のボトルの写真)
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 今年新しく、第3弾が登場しました。このラベルは環境デザイン学科2、3年生6名がデザインしてくれました。良く見ると昭和の校章の桜が素敵ですね。
 
(新しいボトルの写真)
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 キャンパス内の自動販売機で是非、お求めください。学生の間でも大人気で、炭酸類や甘いジュース等を飲むより、こちらの方が好まれているようです。
 
 さて、このような学生の活動は、デザインの分野でも、BMW との協働プロジェクト、学内のサイン計画など数えればきりがありませんが、その他にも、資生堂と共創の美容健康食品の販売戦略の提案、研修学寮のある神奈川県大井町の地域活性化振興策の一つとして特産物を生かしたお弁当作り、信用金庫のご協力の元、東北復興を目的とした情報誌の発刊、大学の地元三軒茶屋の商店街とコラボした街を元気にするプロジェクトなど、今ではその数は累計で100件を優に超えています。実社会に触れ、実践力を磨くこうした企業・地域連携プロジェクトの機会を得て学生達は、課題を発見し、その解決に挑み、果敢なコミュニケーションを試みて主体的に取り組むことで、企業や社会にフレッシュな感性や発想を提供しています。

 毎日更新される本学の公式Facebook では、学内外の学生のさまざまなプロジェクト活動を紹介しています。是非、皆さんも本学のFacebookをクリックしてみてください。

昭和ボストンでの成人式 [2017年01月13日(金)]

 本学では、ボストン留学中に成人を迎える学生の為に現地で毎年成人式を行っています。
 
 今年は、1月6日㈯にボストン留学中の学生202名の成人を祝って、在ボストン総領事道井緑一郎氏をご来賓としてお迎えし、昭和ボストンのレインボーホールで成人式を行いました。日本からいらした学生のご父母やご家族が21名も参加してくださり、まず坂東理事長からのメッセージを昭和ボストンのシュワルツ学長が日本語と英語で代読され、写真にあるような式次第に沿って挙行されました。一生の思い出に残るような、和やかな中にも厳粛で素晴らしい成人式でした。式の後には、寮のウイングごとに記念撮影を行いました。

(式次第)
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(Wing1の学生とともに)
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 お昼は、カフェテリアとサンルームで総領事や式に列席したご家族、教職員と共に202名の学生がランチョン、そして夜は、162年の歴史を持つボストンで最も古いホテルの一つであるOmni Parker Houseで祝賀会が行われ、成人式を迎えた学生たちにとっては特別な一日となりました。
 
 デザートでいただいたBoston Cream Pieは、このホテルが発祥のケーキで、美味しい料理で既にお腹が一杯のはずなのにフォークが止まらず、私もとうとう全部平らげてしまいました。また、このホテルの1階のレストランは、John F. KennedyがJacquelineにプロポーズをした場所として知られていて、そのテーブルが昔のまま残っています。今でもプロポーズするときに、その座席を予約するカップルも多いのだそうです。アメリカの中でも特に古い歴史と伝統を持ち、アメリカ文化発祥の地であるボストンに留学できる本学の学生は、本当に恵まれていますね。
 
 私が附属中高部の教職に就いてしばらくしてから、休職してサンフランシスコ州立大学に留学した時には経済的余裕もなく、学期の初めに購入する一番安いセットのミールクーポンを1学期間うまく使って、食事代をやりくりしました。ミールクーポンが不足し始めるのはいつも学期末の試験やレポート提出の時期。一番安い朝食でサンドイッチに好きなだけ具を詰め込んで、一番大きなコップに飲み物を入れて、部屋に持ち帰り、朝、昼、晩の3食をそれで済ませました。それでも勉強できることが嬉しかった。図書館で思う存分資料を調べ、レポートや試験準備。その学期に学んだことを一つ一つ思い出して、これはどうしてこうなるのだろうか、これとあれはどう違うのかなどと、自分の納得のいくまで勉強ができたことが何より嬉しかったです。もちろん図書館で資料を調べて勉強するだけが学びではありません。私たちが経験するすべてのことについて、これまでは、まるで霧の中にあるようにぼんやりとしか見えなかったことが、はっきりと見えるようになることは、何とも楽しいことなのです。学生時代、素晴らしい機会に恵まれてボストンで学ぶあと2年間に、是非、是非、この喜びを学生の皆さんにも共有してもらいたいものだと願って202名の新成人の誕生を祝いました。

スクールカラー [2016年07月28日(木)]

 夏らしい空が見られるようになりました。これから秋の終わりまで、晴れた日の空を見上げるのが楽しみです。夏は朝方、秋は夕方近くが良いでしょうか。青空を眺めていると、すごくスカッとした気持ちになりますよね。
 
 上空が高気圧に覆われると、空が晴れます。日本では、夏は太平洋側から、秋は大陸側から高気圧が移動してくるのだそうで、海洋で生まれた高気圧よりも大陸で生まれた高気圧の方が空気中に含まれる水蒸気の量が少なく、より高い上空からブルーの散乱光が地上に降り注ぐのだそうです。そのため、夏に比べると秋は、「空高く…」と言われるように、より空が高く感じられ、鮮明な青い空が広がっているように見えるのですね。 
 
(大学1号館9階から見る新宿方面の空)
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 昭和のスクールカラーがブルーであることは、皆さんもご存じのことと思います。『広辞苑』でblueにあたる日本語の「青」の意味を調べてみました。「色の名。三原色の一つで、晴れた空のような色。藍 (あい) 系統の色から、黄みを加えた緑系統の色までを総称する」と書かれています。「青色」といってもかなり幅が広そうです。「日本の色(伝統色・和色)Traditional Colors of Japan」には日本の青空だけでも428色も並んでいます。
 
 人類の祖先が誕生した頃、多くの動物が今もそうであるように、黒と白、つまり明るいか暗いかしか認知していなかったとのこと。人が最初に認知した有彩色は「青」と言われているのだそうです。おもしろいことに、はじめのうちは、青は単に「暗い色」としか認識されず、そのため同様に黒に近い色として認識されていた「緑」との区別をするようになったのはずっと後のこととなったそうです。また、ブルーは「憂鬱」という意味で使われることもあり、暗い色のイメージも残っているようです。
 
 昭和のスクールカラーは、校旗の色がもともとの出どころです。自分が実際に見えている色と、他の人が見えている色は比べようがないので、どんな色なのかの説明は難しいのですが、昭和のスクールカラーは、校旗の地の色と同じ「スカイブルー」です。日本語では空色(そらいろ)。空色は、晴天時の空の色を示す明るく淡い青色のことで青と白の中間色を指しています。
 
(式典で掲げられた「校旗」)
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 「空」は「天」の意味も表します。「天」は「おおぞら」を表すと同時に、「天・地・人」のように用いられる「天」の意味、すなわち天地・万物を支配するものを表し、また、それらを支配する理法も表しています。このように考えると、校旗やスクールカラーのライトブルーは、地球やそこに住む人々を見下ろす高いところにある、万物を支配する道理を示しているとも考えられます。「真理の追究のために高みを目指して進もう」という、私たちの精進の姿の象徴と言えるのではないでしょうか。
 
 爽やかな空の色は、世界的に見ても一番人気が高い色とのこと。そして、青には冷静さを取り戻す心理効果があり、実際に青を見ると心拍数が下がるのだそうです。何かで怒りがこみあげてきた時には、是非、スクールカラーのスカイブルーを思い出すといいですね。

トルストイの『アーズブカ』 [2016年07月15日(金)]

 「アーズブカ」はロシア語でアルファベットの「A, B, C」の意味です。この本はロシアを代表する作家レフ・トルストイ(1828年~1910年)がまとめたものです。トルストイの創作によるお話と、イソップの寓話や古い諺などをもとにしたお話が書かれています。
 
 トルストイは伯爵家に育ち、広大な領地で農民達が働いていました。農民の多くは、文字の読み書きも、計算もできない人が多かったので、トルストイは、農民の子供たちを自分の屋敷に集めて、読み書きを学んでもらいたいと考えました。これがトルストイの学校の始まりです。今から170年近く前のことです。ちょうど日本に初めて小学校が生まれた頃にあたります。子供たちの数が増えると、やがて教室を別棟に作るまでになりました。そしてトルストイは教科書として使うために、少しずつ色々なお話を書きためていったのです。

 というわけで、「アーズブカ」は子ども用の読み書きの教科書として作られましたから、あまり深い意味のある話は入っていないだろうと思うのですが、然にあらず……なのです。
  
(「トルストイのアーズブカ」)
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 本学の現代教育研究所のトルストイ研究グループでは、「アーズブカ」の中から130話程を選んで日本語に翻訳してまとめられた『トルストイのアーズブカ 心をたがやすお話』の読書会をしています。この翻訳本は、国立トルストイ博物館館長のレーミゾフ教授が編集したもので、日本トルストイ協会の初代会長で本学の第2代理事長であった人見楠郎先生が監修出版されました。エー!大人が読むの?と思う方もきっとあるでしょう。ちょっと、次の短いお話を読んでみてください。
 
〈小鳥とたね〉
 えだに小鳥がとまっていると、下の草むらにたねがありました。小鳥が言いました。
 「ようし、わたしが食べてしまおうっと。」
 たねに向かってとんでいくと、わなにかかってしまいました。 
 「どうして、こんなことに?」と小鳥は言いました。
 「オオタカは鳥たちを生きたままつかまえても、なんともないのに、わたしのほうは、ひとつぶのたねのために身のはめつだ。」
 
 子供たちはこの話を読んで、どんなことを考えるでしょうか。
 
「小鳥が種を食べるのは、生きるために必要なこと。落ちている種を食べようとして罠にかかったということは、誰か人間が小鳥を獲ろうと思って罠を仕掛けたに違いない。人間はどうして罠をしかけたのだろう。せっかく種を実らせ、次の収穫の為に備えているのに、それを横取りした小鳥が悪い?」
 
「罠にかけなくても、他に小鳥を追いやる方法があったのでは?」
 
「小鳥は罠が仕掛けてあることを知らなかったので、こんな羽目にあったのだから、無知な小鳥が悪い?」
 
「無知なものは損をするということか?」
 
「罠にはまった小鳥は、どう思ったか? オオタカは生きた鳥を捕獲して食べてしまうのだから、自分よりもずっと罪は重いはず、と考えたのだろうか?」
 
「罪の重い、軽いは何を基準に決めるのか? 小鳥は一粒の小さな種を取っただけだが、オオタカは生きた鳥を捕えた。双方共、横取りには差がない。オオタカは猛禽類の一種。食物連鎖の頂点、つまり一番強い鳥であるはずだ。例えば、バッタが草の葉を食べ、小鳥がバッタを食べ、オオタカが小鳥を食べる。これは自然の仕組みと観念しなければならないことなのか?」
 
「連鎖の下位にあるものほど体が小さくて、その数も多いからオオタカに小鳥が食べられるのは、自然の理に適っているのでは?」
 
「良く考えると、食物連鎖の頂点にいるオオタカでさえも、もっと大きな力を持ったものに襲われる? だって、オオタカは絶滅危惧種……」
 
 と考えれば考えるほど、大げさのようですが人間も含めて、私たちが生きている世界の途方もない大きな仕組みにまで考えが及んでいきます。
 
 ところで、宮崎駿監督の「となりのトトロ」の「トトロ」はオオタカがモデルとのこと。絶対にオオタカは絶滅させたくないですね。私たち地球上に住んでいる人間も、宇宙という大きな生命体の中では、ほんの小さな小さな存在にすぎないのかもしれませんね。

アマースト大学 [2016年05月06日(金)]

 3月の終わり、昭和女子大学海外キャンパス「昭和ボストン」のあるマサチューセッツ州ボストンから車で2時間程の所にあるAmherst College(アマースト大学)を訪ねました。今回は、昭和ボストンには寄らず、コネチカット州のブラッドレイ国際空港からレンタカーでアマーストまで1時間ほどドライブしました。アマースト大学は、全寮制で少人数教育に徹した全米最高峰のリベラルアーツ・カレッジと評され、最も入学が困難な大学の一つです。「少年よ大志を抱け」で有名な札幌農学校のウイリアム・クラーク氏もこの大学で教鞭をとり、後に、同志社大学を創立した新島襄も同大学で彼から科学の授業を受けたのだそうです。

 キリスト教では、イエス・キリストを表すのに the Light of the World(世の光)という表現を使いますが、アマースト大学の教育理念が“Let Them Give Light to the World”(世に光をもたらす学生を育てよう)であることを初めて知りました。昭和女子大学の学園目標「Be a Light to the World(世の光となろう)」とよく似た理念ですね。

 それにしても、ことばは難しい。そして翻訳はもっと難しい。当時の英米文学科の教員が議論を重ね、「世の光となろう」をBe a Light to the World.としましたが、決定するまでtoかofか、はたまたforかといろいろ議論したことを思い出しました。
  
  
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 アマースト大学のキャンパスから1.5kmほど離れた所にある、ディキンソン博物館。祖父は、アマースト大学創設者の一人で、父は同大学の出納係、弁護士で後に合衆国の下院議員となった、詩人エミリー・ディキンソンが住んでいました。
  
  
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 John F. Kennedyが寄贈した、アマースト大学で教鞭をとった詩人ロバート・フロストの記念図書館。フロストは彼の有名な詩、The Road Not Taken(歩む者のない道)にこう書いています。
 
森で道が2つに分かれていた。
そしてわたしは―わたしは、往く者の少ない道を選び、そしてそれが、すべてを変えた。