近現代史ゼミ卒論紹介!

こんにちは、松田忍です。

いよいよ年度末も近づいてきました。学生のみなさんはテストも終わりに近付き、ホッとひといきといったところでしょうか。4年生のみなさんは卒論を提出し、残すところあとわずかの学生生活を堪能なさっているところでしょう。

さて今年も日本近現代史ゼミで提出された卒論を一挙紹介いたしましょう。受験生や下級生のみなさんは、歴文でどんな卒論を書くことができるのだろう?という疑問もおありだと思いますので、参考になさって下さいね!!

近現代史の論文は9本だったのですが、時代はきれいにばらけましたねぇ。

「相馬藩の報徳仕法における富田高慶の役割 ―成田・坪田村を中心に―」

「江戸来訪者の行動に関する一考察 ―弘化・嘉永期の訴訟人を事例に―」

↑ まずは江戸時代を扱った卒論が2本。借金にまみれて困窮した農村の再建策を検討した論文(二宮尊徳ってご存じですか?富田高慶というのは尊徳の弟子です)1本と、江戸にでてきて裁判をおこなった人物の日記を翻刻した上で子細に検討して、当時の裁判に不可欠であったコネ(裏工作!)の実態を明確にしたとても手堅い1本でした。

「第二次長州征討について ―小倉口の戦いを中心に―」

「北越戊辰戦争における軍事編制について」

↑ そして幕末が2本。1本目は第二次長州征討の戦記としてまとめた卒論です。もう1本は戊辰戦争における新政府軍と旧幕府軍のキルレート(戦死者割合)を戦死者リストからはじき出して分析するなどして、優れた新政府軍によって「駆逐」される劣った旧幕府軍という通俗的な理解に対する批判に挑戦しました。

「福島事件 ―会津三方道路―」

↑ 明治時代は1本でした。教科書でもおなじみの福島事件、その前史となる会津三方道路建設をめぐる資金の負担割合などを検討した卒論です。

「ロンドン海軍軍縮条約期における枢密院の政治的位置について」

「日独伊三国同盟から見る外交手腕― 一九四〇年における締結過程に焦点をあてて―」

↑ やはり昭和戦前期の外交というのは多くの学生の興味を引くようで、各学年に1人はテーマに選ぶ学生がいますね。今年は2本提出されました。1本目は、枢密院の役割が時代を追うごとにどのように変化したのかに気を配りながら、ロンドン海軍軍縮会議時点での条約批准手続きを子細に検討した論文です。枢密院の委員会の下審査史料にみられる非常にテクニカルな議論まで踏み込んだのが新しいところでした。2本目は日独伊三国軍事同盟が結ばれる際の、日本側の情勢分析とドイツ側の情勢分析を地道に明らかにした論文です。

「太平洋戦争における特別攻撃隊について」

↑戦時期も1本ありましたよ。いわゆる特攻が戦時期の新聞においてどのように扱われていたか、などを分析した卒論です。「戦時期の新聞なんて情報統制されていて、軍に都合の良いことしか書いてないからつまんなーい!」なんて声が聞こえてきそうですが、そんなことは全然ないんです!というかそういうことは実際に読んでから言って下さい笑!開戦直後、中盤、終戦直前、そして戦後直後において、新聞で特攻隊を取り上げるときのキー・ワードが微妙にズレていく、そのズレを注意深く読み取って、なぜそのズレが生じたのか、が検討されました。

「1970年代以降における埼玉県大宮の都市形成について」

↑ そして戦後が1本。松田は現在戦後史を研究していますので、戦後をテーマに選んでくれる学生がいると嬉しいですねぇ!タイトルはあっさりしていますが、中身は濃密な論文でした。大宮駅の駅前商店街をつぶして再開発ビルを建てる計画が持ち上がった時に、商店街の人がもともと持っていた土地や建物の権利を、再開発ビルの権利に変換して、商店街の人たちがビルに入れるようにするんですよね。その権利変換の計算式を細かく細かく分析して、計画を推し進めるために地元からの賛同を得ようとする行政側の作為が再開発計画にこめられていたことを明らかにした論文です。渋いです。

みんなの卒論を読んでいて思ったことは、日本史でいい卒論を書く際には、史料と心中する覚悟をおぬしはもっているのか!?ってことがとても大事だということでした。良い史料ほど、なかなか底を見せてくれません。全体像をみせてくれません。そこで「うーん、よく分からないから分かりやすい史料で手軽にまとめようかな」と逃げちゃったらダメ!「史料のなかにある謎が考えても考えても解けない」、そうしているうちに卒論の提出日が近づいてくる。焦る。それでも最後の一日まで粘り抜いて考え抜いた卒論、やっぱりそれは読みごたえのあるモノになるんですよね。

そして卒論の執筆過程で学生の思考力や分析力は大きく成長します。

そして卒論の執筆過程で学生の思考力や分析力は大きく成長します。

大事なので2回言いました笑

ん?どういうことかよく分からない?近現代史ゼミに来て下さい 😈

ではでは。