西洋史関連の授業で取り上げた映画ベスト7(中編)

西洋史の小野寺です。
では引き続き後編を。

あ、その前に一つだけ言いたいことがあります。
「学生でいる間に、できるだけたくさん映画を見ておきましょう!」
ということです。
実は別に映画でなくてもよいのです。
本でもいいですし、音楽でもいいですし、絵画でも演劇でも何でもよいのですが、
とにかく無条件で好きになれるもの、夢中になれるものを、学生の間にできる限りたくさん
見つけておいてほしいということです。

説教くさくて申し訳ないのですが、こうやって「貯金」しておいた経験が、
いつか必ず役に立つときが来ます。
人生がいろいろうまくいかないときとか、先行きが見えなくなったときとか、方向性を
見失いそうになったときとか、まあそういう時です。

世の中には数多くの「ハウツー本」があって、ああいうときはこうしろとか、これが人生
成功の秘訣だとか、書店に行くとその手の本がずらりと並んでいますが、 そういう本と
いうのはえてして、「〇〇のような人間になりなさい」「××のような習慣を身につけよう」
といったように、 「新しい人間になる」ことを要求してきます。

まあそれ自体は悪いことではないですし、できるんだったらやってもよいのですが、
それによって今までの自分や、自分が大事にしてきたものまで見失ってしまったら
本末転倒でしょう。

ですが、自分の好きな映画や音楽の「貯金」というのは、まさに「今までの自分が
大事にしてきたもの」に他なりません。
自分の「軸」といってもいい。
いろんなことに迷ったり、判断がつかなくなったりしたときに、
「そういえば自分ってどういう人間だったけ?」
ということを思い出す上で、そういう「貯金」はかけがえのない財産となります。

もちろん人間生きていれば趣味は変わりますし、昔好きだった映画が
今はそうでもないということもよくありますが、そういう変化を受け入れるというところも含めて、
しっかりとした「軸」をもってほしいなあと願っています。

・・・あ、また書いているうちに長くなってしまった。
というわけでこの企画、三回に分けることにします。
今日は「中編」ということで、平にご容赦を。

4.モダン・タイムス

戦間期アメリカの「フォーディズム」について説明するところで、紹介しました。
ベルトコンベア方式で労働者が規律正しく、時間を厳しく守りながら働く。
それによって大量生産が可能になり、製品のコストも減少し、多くの人びとに
製品が手に入るようになる一方で、 労働者は一日八時間労働、給料も倍増と、
労働条件も改善される。
一見いいことずくめに見えますが、それは本当なのか、フォーディズムは
働く人びとを本当に幸せにしたのか。そういう批判精神の表れとして、
この映画の冒頭のあたりを紹介したわけです。

実はこの映画を見せる前は、ちょっと心配もしていました。
なにしろ、1936年制作で白黒&パントマイム中心。
私はこの映画、文句なしに面白いと思うけれど、今の学生はどうなのかなあ?
面白いと思ってくれるのかなあ?世代ギャップとかはないかしら・・・?
などなど不安もありましたが、 まったくの杞憂でした。
さすがチャップリン、彼の笑いは「普遍的」!
本当は10分程度で切り上げる予定だったのですが、反応があまりに
よいので、ずるずると17~8分くらい見せてしまいました。
授業がなかなか進まない・・・。

それはともかく、前半のお笑いが強烈なこの映画ですが、後半は
結構しっとりとした話が多い。
世界恐慌の後遺症がのこるアメリカで、貧困にあえぐ人びとの
暮らしぶりや、犯罪に走らざるをえない状況、社会運動の盛り上がりなどを
共感を込めて描き出しています。
ぜひ全篇通して見てほしいです!