2012年4月

野焼き [2012年04月23日(月)]

野焼き
テニスコートからみかん畑を見上げる斜面で「野焼き」をした。一般的に「野焼き」と言えば、草花の新芽をよく生やすために早春のうちに野を焼くことなのだが、東明学林では森の枯れ枝や、伐採した樹木、剪定した枝を集め、ある程度たまったら燃やす、ことを言う。

灰色の煙が登り、炎が踊りはじめると、なんだか大きな護摩焚きのように思える。
不思議なもので、炎を見ていると、誰もが寡黙になる。炎や、立ち上る煙に何を見るのだろう。森の中を這いずりまわって枯れ枝を集めた苦労も忘れてしまう静寂の時間だ。

斜面と炎、潤沢な燃料…これから想像できるものはなんだろう?もしかして登り窯ができないか?石窯でもいいか?

炎が立ち上がり始めると、放射される熱で近づくことができない。佐藤さんのメガネレンズ(プラスティック レンズ)は、熱で融けてしまった。

 

 


周りに延焼しないように注意して炎を見つめていると、そのうち誰もが無口になる。

 

 

 

 

新芽
春が来ているのに、まだ気温が上がらない。茶畑が気がかりだ。連休明けから茶摘みが始まるのに、いまだ新芽が出揃っていない。それと昨年足柄茶から放射能が検出され、地元のお茶農家は、収穫した茶葉を全て捨て、出荷を断念した。東明学林も茶摘みを取りやめた。今年は、放射能はどうなのだろう?

とりとめのない不安が広がってゆく。農家の古老なら、きっとこう言う。「人の都合でどうこう出来ないことを心配しても仕方ねえ。いま出来ることをしておくだけだ」と。

先週末 新芽を出すための施肥をした。ここらでは「芽出し施肥」と呼ばれている。また放射能検査のために茶葉を摘み、検体として放射能測定機関へ送った。後は結果を待つだけだ。新芽を取って口に入れた。ゆっくり噛むと、かすかな渋みと、苦味が口の中に広がった。

茶畑では、まだ新芽が出揃っていない。

 

 
 

 

 

肥料は農協から購入した。肥料の名前は「わかみどり」という。なかなかお洒落なネーミング!袋に印刷されている数値「20-4-8」は、窒素・リン酸・カリの配合比を表している。お茶は「窒素」が好きなんだ!


草刈りを行ってから、茶の木の根元に施肥をしてゆく。中腰の姿勢が続くと茶畑のあちこちから「腰が~!」という声が上がる。

 

 

竹垣と土留め
かつて中学生の修学旅行と言えば、ほぼ「京都・奈良」という時代があった。わけもわからず名所旧跡や古刹を観てまわり、宿屋で枕投げをし、大浴槽の栓を抜いて大目玉をもらい、新京極でお土産に絵はがきを買った記憶が残っている。もう一つ、今でも鮮明に記憶していることがある。京都嵯峨野でみた竹垣の美しさだ。その時に受けたショックは忘れられない。そんな原体験が影響しているのか、今でも竹垣が好きだ。

正確に言うと竹や、樹木、石などで作られた垣や小道が好きだ。この先に、何があるのだろうとワクワクさせる気持ちが心地よい。東明学林には小道もあるし、小さな土留めが必要な斜面もたくさんある。そこに材料も豊富にあるので、これは修学旅行で受けたショック(心的外傷)の治療なのだと、勝手な理屈を付け、せっせと竹垣、土留め作りに励んでいる。

東明を訪れた人たちが、この先に何があるのだろうと思う散歩道を作りたい。連休明けからは散歩道の道標作り、手すり作りが始まる。まだ先は長いが楽しみだ。


竹の小枝を、杉杭の間に挟んで斜面の土留めにした。限られた時間で作っているので未完成で、技術的にも未熟。

 

佐藤さんが、梅の剪定枝で作った土留め。コンクリートの階段との違和感がなく、落ち着いた雰囲気を出している。弟子の腕が上がってきていて、師匠としてはうかうかできない。


1階寮棟 南側 非常階段から出た梅林 斜面の土留め。竹を細長く割いてから杭に入れ込んでいる。竹材は、2年程度で取り替えるので、労作のレパートリーになりえるかもしれない。

 
by生天目

 

そこら中に春がきた [2012年04月16日(月)]

シイタケ乾燥
今年もシイタケ乾燥の時期になりました。
この時期はニョキニョキとどんどん出てくるシイタケとの戦いです。
雨が降ると、一気にシイタケが成長してしまって、お化けキノコのようになってしまいます…。

いしづきを落として、乾燥させる作業は、とても面白いです。
採ってすぐの肉厚シイタケは、いしづきを取るのも大変です。
ハサミをめいいっぱい開いて、数回に分けていしづきを切ります。
ハサミを入れるとなんとも言えない力強さを感じます。


乾燥後もシイタケの香りがしっかりとしています。
見ているだけで美味しそうです。

 

  
 

不思議なもの
歩いていたら、不思議なものを発見しました。

恐らく・・・蜘蛛の巣だと思います。
雨が降った次の日に外を歩いていたら、足元に光るものを発見しました。
近づいてよ~く見てみると、網目状になっています。
足元に作られた蜘蛛の巣を見るのは初めてだったので、本当に蜘蛛の巣なのかいまいち自信が持てなかったのですが、他の人に聞いても「蜘蛛の巣だよ」との答えがかえってきたので、きっと蜘蛛の巣です。

踏まれる可能性のある場所に作ることもあるのですね。
それとも、何らかの事情があって落ちた…のか?
でも蜘蛛の巣が落ちるなんて…なさそうですよね。
なぞは深まるばかりです。
この写真だと分かりにくいのですが、ズームして見ると、蜘蛛の糸に水滴がたくさんついていて、きれいな水晶のネックレスのように見えるのです!
ズームをした写真を載せたかったのですが、上手くできませんでした。ごめんなさい。

 

きれいになります!
現在、東明学林は改装中です。
ドアの色やトイレの色など、日々きれいに変わっています。
春と共に、気持ちもお部屋も明るく変化していきます!
楽しみにしていてください。

 

 

 

by兼子

仕事の誇り [2012年04月09日(月)]

師匠と弟子
お昼ご飯を早々に済ませ、何かを始めた2人。
何をしているのか、近づいてみると、なにやらニラ(ユリ科ネギ属)のような植物の根をむしっている。ノビル(ユリ科ネギ属)だ!ノビルの酢味噌和えを作るために下準備をしていた。

東明学林の森にも食べられる植物がたくさんある。ツクシ、ヨモギ、ヤブカンゾウ、スイバ、タンポポも美味しい。大雑把に言うなら「毒草」でなければ、なんでも食べられると考えていい。とは言うもののキノコでも、山菜でも、果実でも、自然から採集して食べようとするなら、その道の先達に教わり、実地経験を積むことが必要だ。

ということで、この二人は、山菜採りの師匠と弟子という関係になる。師匠は「フキは〇〇〇の斜面にある。あと少し大きくなって採るといい。」と弟子へ伝える。庶民の文化伝承とはこういうことなのだろう。〇〇〇(山菜の場所)は、弟子だけに教えられる秘密だ!実は、フキは、東明のどこにでもある!


農家の庭先にいる農民の親子ように見える2人だが、実は師匠と弟子。
師匠は一段高い椅子に座り、弟子は教えを請う。

真っ白なノビルの球根部が眩しい。この後 酢味噌和えの試食会があった。
もちろん試食後も全員無事!

 

夏みかん洗い
カレンダーの「3月」頁を切り取ると、ヒヨドリに食べられた夏みかんが多くなる。自然が教えてくれる夏みかんの収穫時期だ。収穫が始まると例年通り、夏みかん園のあちこちから声が聞こえる。樹に登り、夏みかんの実を落とした時の悔しさから発する悲鳴だ。

今年は収穫メンバーが5人なので悲鳴の発生度が高い。傾向としてrookieの悲鳴は短く、「あっ!」とか「あら~」と素朴だ。一方veteranはやや長い。「枝が伸びて、手が届かなかった! 無理はいけね~!」と、悲鳴の中に「言い訳」と「反省」、さらに「アドバイス」も入れ込む。さすがveteran!

収穫された夏みかんは、出荷前に一つ一つ水洗いされる。この過程で、サイズ別に分けられ、傷、汚れのひどいものは取り除かれる。水洗い作業を行いながら旅行や、食物、家族の話、BMIなど、たわいもない「おしゃべり」が始まる。軽作業時の「おしゃべり」は、作業の効率を高める効用がある。畑の草取りからの経験則だ。共通の体験を基盤に、気遣いしなくていい相互のコミュ二ケーションが、チームワークを高めるのだろう。


手も、口も動かしながら作業が進む。


洗浄をして、もう一度水に浮かべ、皮の傷、汚れを確認する。

 

 

 

 
 
今年もこれだけ収穫できました。


 

 

 

 

仕事の誇り(pride)
誤解を恐れずに言うと…危機管理(risk management)に、真剣に取り組み、何も起こらなければ、やがて誰も気に留めることなく忘れられてしまう。だが危機を想定し、何も起こらないことを目的として危機管理を行うのだから、「何も起こらず、誰も気に留めることなく忘れられてしまう」状態がbestなのだ。いつも何も起こらず、存在すら忘れられてしまう…これが危機管理を担当する者の誇り(pride)だ。

駐車場広場の防護柵の改修工事、内部の階段 手すり かさ上げ工事が完成した。危機管理の完成ではなく、これからが始まり。

防護柵を高くして安全性を高めながら、周りの景観に溶け込むように柵の色は黒にした

ヤマモモの樹の下に花壇を作り、ベンチを置く予定だ。 


前にあったガードレールの倍の高さになった。

 
 

 
 
 

階段の手すりのかさ上げをした。これで「はずみで落ちる」ことは防止できる。


by生天目

ぎちぎちと鳴る汚い手 [2012年04月02日(月)]

農薬散布
ミカンの花の蕾ができる前と、花が咲く頃に農薬散布をする。葉ダニを除去するためだ。
合計2回 農薬を散布する。ミカンの専門農家は果実ができた頃にも農薬散布すると聞いているが、東明では果実に農薬はかけない。収穫量、外見より安全性を大切にしているからだ。

仕事にはそれぞれ適した服装がある。農薬散布なら、カッパの上下に、つばのある帽子、防護マスク、ゴーグル、ゴム手袋。これだけ装着すると、作業を開始する前にカッパの下を汗が流れだす。さてrookyふたりは作業に慣れただろうか?veteranの指導が異なるから迷った?

「はじめに葉の裏側へ薬をかけ、次に表側へ散布すると速いよ!」
「葉の表から裏へ散布するほうが、上手くいく!」
「どっちでも、いいんじゃない!ざっくりとね!」

skillやtechniqueは、いろいろある。自分で体験し、なぜなのか考え、体得して欲しい。

フル装備で全員が集合したので記念写真。でも誰が誰かわからない!

 

スターウォーズに出てきたボバ フェット(バウンティー ハンター)みたい!

 

 

 

安定した姿勢が頼もしいぞ。後ろについているのは「ホース持ち 兼 指導教官」だ。この指導教官は「葉の裏派」かな?

 

 

 

 

ぎちぎちと鳴る汚い手
チェーンソーの調子が悪い。エンジンの回転数を上げるとパワーが落ち、止まってしまう。
素人には手に負えないので、地元の農機具店 T農機へ修理を依頼した。翌日T農機から彼はやってきた。無口で、おとなしい、普通の「おじさん」…これが彼に対する第一印象だった。

チェーンソーを受け取り、持ち帰るかと思ったら、彼は駐車場で「お店」を開き出した。工具箱を開け、馴れた手つきでチェーンソーを分解し始めた。まるでレゴブロックの塊を一つ一つばらすような手つきで、チェーンソーの部品をアスファルトの上に並べた。

故障の原因を説明する彼の言葉は単純で明快だ。そこには第一印象とは、全く異なる有能なプロのメカニックがいた。ふと彼の手に目を向けると、指先はひび割れ、荒れている。黒いオイルが、爪の間、付け根、ひび割れに染み込み、一日の仕事が終わり石鹸で洗っても落ちるような生易しい汚れではない。長年の仕事が、彼の手を染め上げたのだろう。

不思議に、自分の眼には、彼の手が汚く、不快なものには写らなかった。むしろ魅力的で、機能的なprofessionalの手に見えた。彼の手に見とれていたら、ふと宮沢賢治の詩が浮かんできた。

陽が照って鳥が鳴き
あちこちの楢の林もけむるとき
ぎちぎちと鳴る汚い手を
おれはこれからもつことになる

「春と修羅」にある「春」という短い詩だ。宮沢賢治が花巻農学校の教員を退職して、農民になるときの覚悟を表している。この詩に出会ったとき、「ぎちぎちと鳴る手」の意味がわからなかった。彼の手を見て、宮沢賢治の気持ちがわかった。

自分も、彼のような手…ぎちぎちと鳴る汚い手を持ちたい。こころからそう思う。

 

手に吸い付くようなドライバーの動き。子供の頃、普請現場でカンナがけをしている大工さんに憧れた気持ちを思い出した。

 

 

 

 

 

無駄のない動きは、見ていて心地いい。

使い込まれた工具はcoolに、シルバーメタリックに輝く。一つ一つに命が宿っているかのようだ。

 

 

 

アンティーク マシーン
茶畑の上段に朽ちかけた農具小屋がある。長い間 使われた形跡がない。昨年の夏、その小屋の中に、つるに覆われた機械らしいモノを見つけた。「なんだろう?」気になるので小屋から引きずり出した。「気になるものは、とりあえず拾う」だが、「引きずり出す」も加えた。

「ミキサーだ!」モルタル、コンクリートを練るミキサーだ。モルタルは、砂とセメントに水を混ぜたものだ。コンクリートは砂、セメント、砂利に水を加えて練ったものだ。いま市販されているミキサーは、モルタル用、コンクリート用に別れて、ひとつの機械で両方を作ることはできない。こいつは器用で、レアなアンティークマシーンだ。

「ここ10年は使われていないな、生き返るかな? T農機に見てもらおう。」…そう思いながらも、他の作業に追われ半年間ミキサーのことをすっかり忘れていた。チェーンソーの修理に彼が来た日、彼の技量を見て思い出した。

「見て欲しい機器があるんだけど、いいかな?」
「はい、なんでしょう?」
「これ」
「ほー!珍しいですね!久しぶりに見た!」
「動かせますか?」
「やってみましょうか!」

お茶畑の青空修理が始まった。彼 曰く「修理で一番気を使うのは、草の上に置いた部品を見逃さないようにすることでね。一度見逃すと、探すのに時間が掛かって!」そうか!修理は工場だけじゃなくて畑や畦道でもするのか。あっという間にエンジンが外れ、ガソリン気化装置(キヤブレター)のクリーニングも終わった。

ガソリンを入れ、エンジンのスタートコードを引っぱると…ブル、ブル、ブルン、ブルル~ンと動き出した。エンジンは久しぶりに意識を取り戻し、戸惑っていたようだが、心地よい音を立て始めた。

これで散歩道の階段が修理できるぞ!案内標識の柱も作れる!そうだ、オリエンテーリングのサインポストも作れるな!ダッ、ダッ、ダッダッ…エンジン音が「触媒」となって、頭の中に新しい仕事が増殖している。

もう一つ大切なことを忘れていた。自分は、彼の名前を聞いていない。今度 会ったら、名前を聞いて友達になろう。ありがとう、これからよろしく。


ずんぐりむっくりとした愛嬌のある姿だが、パワーがある。錆びて存在感のあるハンドルがかっこいい。

 

by生天目