開催日:平成29年6月21日(水)16:30~17:30
場所 :学園本部館3階 大会議室
講師 :濱名 篤 氏(関西国際大学 学長)
テーマ:「3つのポリシーの実質化とアセスメントによる質保証
参加者数:179名
濱名篤先生は、文部科学省中央教育審議会臨時委員などを兼職されておられ、高等教育論、教育社会学の専門家である。講演の要旨は次の通りである。
大学教育に関する内部質保証のPDCAサイクルが提示され、3つのポリシーに基づく、計画に対して、アセスメントポリシーによる評価が求められている。本日の焦点はこの評価方法を中心とする。
質保証の可視化の方法は、一元的な尺度や一律の定量化が妥当かどうか、抽象度の高い、検証不可能な評価で社会が納得するのだろうか?問われているのは、学位プログラム+大学全体が優先であるが、個々の学生の評価も含まれる。そこで、ポリシーの設定は検証できることが必須条件である。また、評価の方法は目的に合わせて、多元的・複眼的に評価することが必要である。例えばKPI(Key Performance Indicator)による目標管理と質保証、戦略指標ダッシュボード作成による、到達度を数値で示した事例や、定量指標による実証としてTOEIC®のスコアの上昇で示した例がある。海外ではミクロ(科目)、ミドル(科目群・コース)、マクロ(一般教育全体)として目標を設定し、IRが卒業生の中からサンプリングし、教員からなる評価チームを編成し、各チームがそれぞれの学修成果に焦点を当てた評価活動を実施し、評価チームごとの結果についてコンセンサスをつくり、レポート作成後、学内に配布する事例もある。
関西国際大学(KUIS)では、開設以来これまで主体的な学びのための教学マネジメントの構築に向けて、様々な取り組みをしている。KUIS学修ベンチマーク、卒業認定と学位授与の方針(DP)、CP(1学科)、AP、さらにこれらの評価事例で紹介していただいた。たとえばDPの評価については、毎学期の自己評価とアドバイザー面談を実施し、学生個々の成長を自覚させ、その評価をクラスアドバイザーがアドバイスする形式で行っている。その他、ルーブリックを活用したアセスメント、海外での学習成果の重層的・多元的評価の到達事例など、様々な評価方法について紹介いただいた。
これらの経験から、PDCAサイクル、教育単位の中でのつながり(学年、学科、大学~企業・社会・地域など)が重要であるなどに気づいた。アセスメントの基準と方法として、測定可能な目標設定、評価方法は直接と間接を組み合わせること、私学の独自性は全国標準を取り入れるだけでなく、独自性を活かすためのルーブリックを活用した多元的な評価の可能性を探るべきである。大学教育改革の方向性は汎用性を持った「知識・技能」「思考・判断力・表現力」「主体的態度」といった学力3要素を育成できる大学教育の質保証のメカニズムの確立を目指すことにある。学習成果の可視化は必然であり、今後さらに要求が強まるであろう。講演後、質疑応答が行われ盛会のうちに終了した。
以上