こんにちは、松田忍です。連休中ではありますが、なんだかんだと毎日大学に来て勉強しています。はやいもので今年度も1ヶ月が経過いたしました。5月にはいりましたので、そろそろ去年のブログで紹介した鴨がやってくる頃?今年もやってきてくれるのでしょうか?ちょっと時期が過ぎた観もあるので、少し心配もありますが、楽しみにしております。
さて今日のお話。
日本近現代史を専攻したいと思っていらっしゃる学生からしばしばぶつけられる質問に「日本近現代史ってどんなことが卒論のテーマになるのですか?」という問いがあります。「史料が存在するテーマならなんでも研究できますよ」というのがその問いに対する正しい答えかなとも思うのですが、それではあまりにも素っ気ないので、松田ゼミの学生たちがどんなテーマと格闘してきたのか、あるいは現に格闘しているのかを一挙紹介してみたいと思います。歴史系の学科を目指す受験生のみなさまもご参考になさって下さいませ。
昨年度提出された卒論16本の内訳について・・・。
幕末は特に人気があり6本の論文が提出されました。
- 「一会桑政権――一橋慶喜を中心として」
- 「高杉晋作における倒幕思想形成について」
- 「薩長同盟後の薩摩藩の動き――小松帯刀を中心に」
- 「吉田松陰の人間性」
- 「アーネスト・サトウ――『英国策論』から見る日本観」
- 「ワーグマンが見た幕末・明治の日本――『THE JAPAN PUNCH』を通して」
興味を持った最初の入口はテレビドラマや小説などが多く、まずは人物中心でテーマを選び、そこから難解な書簡の解読を繰り返して、作られたキャラクターではない人物の実像に迫るという形が多いかなぁ。書簡というのは濃密な情報を我々に残してくれる史料ですから、一点一点の書簡読解に真剣に取り組むことによって、いい卒論が書けるようになります。ちょっと毛色が違ったのはワーグマンに関する卒論。ポンチ絵と呼ばれる風刺画を通じて、幕末・明治の日本の描かれ方を探っていくという図像分析からなる論文でした。ポンチ絵に描かれた似顔絵が誰の似顔絵なのかを確定するためにウンウンうなりながら一緒に考えたことを思い出します。
幅広く過去の文化というのも卒論のテーマになります。
- 「 『少女の友』創刊期の編集方針について――星野水裏の想いとその反応」
- 「カフェー文化について――戦間期の実態と取り締まりから」
- 「昭和戦前期におけるラジオ発の文化」
少女雑誌、カフェー、ラジオですから、昨年度は華やかな文化に興味が集まったのかなと思いました。ただ文化というのは文字に残りにくいモノですからそれを卒論にするために3人とも一工夫を加えていました。『少女の友』ですと、雑誌編集者たちが読者に宛てて発し続けたメッセージを分析することで、明治期にどんな少女像が理想とされたのかを探ろうとしましたし、カフェーについては、警察がカフェーをどのような規則で取り締まったのかということを分析することで、逆にカフェーの実態を明らかにしようとし、そしてラジオに関してはまずはラジオの技術的な発達についてきちんとまとめた上で、その技術がどのように取り入れられたのかを当時のエッセーや小説から分析していました。
明治期の国際関係としてくくれるような論文も3本ありました。
- 「日清戦争開戦過程の再検討――大鳥圭介を中心に」
- 「岸田吟香の清国観――明治初期における日清関係の一側面」
- 「榎本武揚の国際感覚」
いずれも歴史上の魅力的な人物に注目することで、彼らが見た世界を現代に再現し、彼らがその世界のなかでどのように判断し生きようとしたのかを描いた論文になっています。榎本武揚の論文は人物中心、大鳥圭介の論文は大鳥が関わった事件中心、岸田吟香の論文は人物と事件をバランスを取りながら論じた論文でありました。
戦時期に関する卒論は多そうな気がするのですが、昨年度は意外に 少なく2本でした。
- 「日米両国を見つめ続けた評論家――清沢洌が目指した 「自由主義」」
- 「軍事教練の成立及び大学学部の反応と対応の考察」
太平洋戦争というのは比較的新しい過去であり、またドラマなどで作られたイメージが非常に強い部分でありますので、実際の歴史史料をみることで、もともと持っていたイメージをどのようにアップデートしていけるかが一つの大事な方向性になるかもしれません。また
- 「暉峻義等の労働観――戦時体制への適応」
というタイトルの卒論も出されました。「デモクラシーの大正」から「戦時体制の昭和」がどのようにして生まれてくるのかについて、1人の学者に注目して論じた論文です。この論文もある意味で戦時期を解明するような論文とくくってもいいかもしれません。
その他、一風変わったテーマを扱った論文としては、近世期における伊能忠敬の地図作成作業及びその技術的側面を明らかにした
- 「忠敬と伊能図」
というものもありました。
テーマはバラバラでしたが、みんなで協力し合いながらお互いの史料を読みあって学問を深めていっております。日本近現代史をやろうと思っているみなさんは是非参考になさってみて下さい。
「こんなことをやりたいんだけど史料はありそうですか?」というようなご質問も大歓迎です。松田研究室までどうぞ♪