西洋史の三大学共同ゼミ、今年度もいよいよ始動しました!

こんにちは。西洋史の小野寺です。

 

 

 

 

 

 

 

 

共立女子大学の西山暁義ゼミ、立正大学の森田直子ゼミと共同で行っているゼミも、今年で3年目となります(共同ゼミの趣旨についてはこちら)。
毎年夏には、西洋史に関するテーマを一つ設定して、その課題に関するプレゼン→KJ法によるグループワーク→ディベートを実施しています。
一年目のテーマは、「東ドイツは不法国家だったか」。
二年目は、「宥和政策はやむを得なかったか」。
いずれも近現代ドイツ史をテーマにするものでしたが、今年はまさに今ホットな問題、「ドイツ・メルケル政権による難民受け入れ政策は是か非か」について議論してもらいます!

今年はまずその準備作業として、市野川容孝・小森陽一『難民』(岩波書店)を三大学のゼミ生全員が読みました。
先日本学で行われた顔合わせでは、各大学の代表がレジュメやパワポを作成して発表を行い、この本の概要を説明しました。
「難民」という概念の定義をめぐる議論や、「諸権利をもつ権利」「歓待の権利」といった用語など、一筋縄ではいかない複雑な内容や論旨をもつ本書。
学生の皆さんも悪戦苦闘していたようですが、こうやって全員で内容を確認しあうことで、理解も深まったように思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は4つの班に分かれて、プレゼンについての打ち合わせ。
①アメリカへの移民(ヨーロッパ系、アジア系)、②ユダヤ人を難民にしたドイツ/難民となったユダヤ人、③被追放民を受け入れるドイツ/ドイツ人被追放民、④トルコ人労働者を受け入れるドイツ/トルコ系移民という4つのテーマをそれぞれの班に割り当て、夏休みの間に各班でじっくりと調べてもらった上で、10月の上旬に再び集まってプレゼンをしてもらいます。
そうやって難民/移民の歴史について十分な知識を得た上で、現在の「難民危機」について情報を収集し、最後にその是非について議論する、という運びになっています。

難民危機に限らず、現在の世界情勢はますます混迷の度を深めつつあります。
そうやって世の中が先行き不透明になればなるほど、人は方向性やヒントを過去に求めようとします。
もちろん過去を学んだからといって、それがそのまま直接役に立つわけではありませんが、歴史はいわば「らせん階段」のようなものですから、まったく同じことが繰り返されるのではないにせよ、似たような構造が反復することがしばしばあります

歴史を学んだからといって未来が予測できるようになるわけではありませんが、未来に向けてより「賢くなる」ことはできます。
「いま・ここ」に必要以上に振り回されることなく、可能な限りしっかりとした見通しを持ちたい。
今、多くの人びとが切実に願っていることだと思います。
歴史学はそうした願いに応えられる学問であると、私は信じていますし、大学ではそうした心の「軸」のようなものを是非学んでいってもらいたいと思います。