今回はボドリアン図書館(2015年夏・オックスフォード大学)の旅便りを掲載します。
インド・パキスタン・中央アジアの仏教文化関係の資料収集のためにオックスフォードのボドリアン図書館を利用しました。使用許可の準備は結構面倒でしたが、いざオックスフォードへ来てみると湿度も無く天気は最高、行き届いた環境の中で研究生活を楽しみました。下の写真(左)は始終持ち歩いていたオックスフォードの大学マップ、右は宿舎として滞在したレディーマーガレット・ホール(LMH)というカレッジのマップです。
オックスフォードは、ロンドンの西北、バスで1時間半くらいのところにあるテムズ川上流の大学街です。多くのカレッジの集合体をオックスフォード大学と総称しています。「ハリー・ポッター」の魔法の学校で有名になったクライスト・チャーチは8世紀に建てられました。
私はレディーマーガレット・ホールというカレッジの宿舎に滞在しました。ここは普段は学生の寄宿舎として使われていますが、夏休みは外部に開放されています。この大学はヘンリー7世の母であるレディーマーガレット・ビューフォートによって1878年に創建されました。オックスフォードの女子大学としては最初に建てられ1978年に男女共学となった伝統あるカレッジです。
さて、ポーターズロッジと呼ばれる守衛室で手続きを済ませて、宿舎の中に入っていきます。
室内は8畳くらいの広さで、ベッドと机、書架、ロッカー、小さなシャワー室、今は使われていませんが小さな暖炉もあります。窓の外には大きな泰山木が茂り、白い大きな花をつけていました。
キャンパス全体が何か、ラベンダーみたいな香りに包まれています。夏休みで学生がいないせいか静寂さに包まれて、まるで森の中にいるような雰囲気です。宿舎の裏手に廻ってみると近くの小川から運河を引き込み、そこにはパントと呼ばれる小舟が浮いていて、白鳥やカモの親子が泳いでいました。
朝食は芝生を横切ったダイニングホールで食べます。ビュッフェスタイルでハリーポッターの食事の場面に出てくるような古いテーブルと椅子と歴代の学長の大きな油絵が壁に掛かっていました。何だか先生方から見詰められているようでした。
さて、ボドリアン図書館へ行ってみましょう。私が滞在した宿舎からボドリアン図書館までは、オックスフォード・パークに沿って徒歩で15分ほどかかります。大きなヒマラヤ杉と広大で緑美しい芝生を眺めながら毎朝、図書館に通って行くのはとても気持ちの良いものでした。
中央図書館では、まず利用の為のインタビューを受けないといけません。日本から添付メールで送っていた書類とそのオリジナル版をつき合わせ、ここの図書館で何がしたいのかを聞かれます。カウンターにいる図書館員はユーモアを交えながら日本のことを尋ねたりして、私が行くべきいろいろな図書館を親切に教えてくれました。ここには中央図書館以外にも各カレッジ付設の多くの図書館があるのです。カウンターで写真入りの入館証を作って貰えば、これ1枚でどこの図書館でも自由に入館出来ます。
ボドリアン図書館の由緒ある手すりの階段を上って行くと、またカウンターがあってそこでも利用方法を説明してくれました。それによると調べて持っていった資料は書庫に入っていてすぐには出せないとのこと。この日の2時半過ぎか明日の10時以降に貸し出しができるとのことでした。この間、パソコンの準備をしていたらコンセントとプラグが合いません。そこでまた図書館員に相談すると、これを使いなさいと言ってプラグを親切にも貸してくれました。
宿舎に帰ったら、11時に貸し出した旨のメールが届いていました。初回は、上下本を入れて6冊借り出しました。書庫の本は申込みをして、準備が出来たらメールで知らせるようになっているようです。夏休みは特に世界中からいろいろな研究者が来るようです。
昼食で外に出るときも、そのまま資料は置いていきます。最後に使い終わった図書も机上にそのまま置いて帰ります。後で図書館員が片付けるようです。このようにしてオックスフォードでの研究生活を満喫しました。
ボドリアン図書館の近くに、BLACKWELL’Sという本屋があります。地下まであって喫茶室もある大きな本屋です。お茶を飲みながら本を読み、あれこれと考えることも自由に出来る贅沢な時間を過ごしました。書店員に欲しい本のリストを渡すといろいろと調べてくれました。とても無いだろうなぁと思っていた本も取り寄せればあるというのです。いくらだと聞くと51£。ちょっと高かったのですが、来週の水曜には入荷すると言うので即決しました。入ったら私が滞在したLMHに電話をすると言ってくれました。この他にも、大学の出版局が経営している洒落た本屋も街の中にあります。
オックスフォードでの生活で困った点は、食事がまずく物価が高いと言うことでした。物価はおおよそ日本の2倍から3倍というところです。例えば、昼食に2000円~2500円前後はかかります。若い人々はアパート代と食費を出し合って共同生活をしている人が多いようです。
さて、このようなわけで2015年夏休みは、精神的開放感を満喫したボドリアン図書館の滞在でした。
(早田記)