【ヨーロッパ歴史演習】「現場」で実物を見るということ(4年・Iさん) [2018年03月14日(水)]

今回ご紹介するのは、日本服飾史を勉強しながら、西洋史の授業にも関心を持っていろいろと参加してくれていた、4年生のIさんのレポートです。

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本研修を通して私が気付いたこと、学んだことは、3つあります。一つは「実際の場所に行く」意義、二つ目は現物を見る事、そして三つ目が実験の大切さです。

今回、実際に歴史的事件が起こった場所に行ったことで、何故その場所に行くべきと考えられているのか、その理由を再確認することができました。また、これまで平面的だったものが、立体的になったと強く感じました。
特に実感させられたのは、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所です。
ここには、収容された人々から奪われた衣服や靴、食器などが残され、うず高く積み上げられている展示がありました。中でも、髪の毛の展示を見たとき、背筋が寒くなるような、内臓が締め付けられるような感覚を覚えました。
それまで、文書としてのみ認識していたものが、実体を持ち眼前に現れたことで、明らかな「事実」であると脳内に焼き付いた瞬間だったと思います。文書で知ることの限界と、実際に見ることで分かる、感じることの多さに驚きました。


一方、アンネの隠れ家を訪れた時は、強制収容所とは異なり、当時のものが殆どありませんでした。文字や音声ガイドで語られる当時の状況を、壁に残された生活の痕跡から想像する、という印象が強く残っています。
音声ガイドは、隠れ家の中ではありません。当時の様子を再現した写真共に、壁にある地図や写真、書き込みから、『アンネの日記』に描かれた内容を思い描きます。「実際の様子を見る」のではなく、「実際の様子を感じる」博物館だと思いました。
家財や人形がなくとも、室内の大きさや階段の傾斜などから隠れ家生活を実感することは難しいことではありません。当時の様子を実際に見ることも大切でしょう。しかし、視覚的なものだけでなく、感覚的なものも実際に行くことでしかわからないことだと思います。
「実際の場所に行く」ということは、その場所の性質によって、理解できることと感じることは違うでしょう。しかし、共通することは、「実際の場所に行くことで立体的に実感できる」ことだと思いました。
文字情報でのみの知識では、得られるものに限界があり、また平面的なものになりやすいでしょう。そこで現地に赴き、その地域の人々が感じていること、実際の様子を知ることでより深い理解を得られるのだと実感できました。

次に、アムステルダム国立美術館で、オランダの襟を実際に見ることができました。日本でも、年に一度文化学園服飾博物館で「ヨーロピアン・モード展」と題し、女性服飾を実際に見ることができます。しかし、日本国内では17世紀の服飾はなかなか見られるものではありません。
また、アムステルダム国立博物館には、17世紀の人々を描いた作品が展示されており、絵画と実物をほぼ同時に見ることができます。時間をそれほど置かずに描かれていない襟の裏側を見られるため、服飾の表面的な部分だけでなく構造まで理解できると感じました。
これまでどのようにして製作されていたのか考えが及ばなかった袖の部分を、今回実際に目にすることができました。現存する服飾がどれくらいあるのかはわかりません。
しかし、実際に見なければわからないことは多く、表面的なものだけでなく構造を知るためには、現物があるならばそれを見る必要があるのだと再確認できました。服飾という日常に直結したものであっても、歴史的に重要なものと同様、実際に見ることが重要なのだと強く思いました。今後も出来得る限り現物を見に行こうと思います。

最後は、実験をすることの大切さです。
オランダのレジスタンス博物館を訪れた時、“Junior”と題された展示の内、Henk少年の部屋を見ていた時、手作りのラジオを見つけました。このラジオを見た時、私はとても驚きました。何故なら、これよりも大きく、コードはピンと張られていましたが、このアンテナは私の実家にあったからです。
私が中学生の頃、父がこのアンテナを自作し、ラジオを試していたことがありました。これを作っている父の姿を見た時、「いったい何をしているのだろう」「何故作っているのだろう」と思いました。しかし、今回レジスタンス博物館でこのアンテナを見つけた際、父が実験を行っていたのではないかと思いました。
実際にこのアンテナが作られる場面にいなければ、これが一体何なのか、何故手作りしなければならなかったのかわからないと感じました。また、アンテナだとわかっても本当に使えるのか、半信半疑になっていたと思います。どんなに細かなものでも実験をすることで、新たな気付きを得られるのだと実感しました。

今回の演習を通して、実物を見る、知ることの重要性を再確認することができました。また、ナチス・ドイツに対する考え方も国や地域によって異なるのだと気付きました。
現地に行き、展示方法や内容をみることで、理解し更に新たな疑問に気付くことが出来るのでしょう。学び、調べ、考えることはどのようなものにも使用できる基本的なことなのだと実感しました。今後も出来る限り実物を見て理解を深めていきたいと思いました。