[授業紹介]英語による西洋史 [2018年05月14日(月)]

西洋史の山本です。こんにちは。

今日は「英語による西洋史」という授業を紹介します。

授業風景

西洋史で卒論を書く学生は、何らかのかたちで「英語の文献」にあたる必要があるでしょう。学術英語には、口語的な表現はおろか、(小説、新聞等の)他の文章とも異なる、一種独特の言葉遣いや決まり事があります。よって、この授業では文意の正確な理解のみならず、そうした学術的文章の作法を身に付けることも目標としています・・・。

「!!?」

ちょっと、そこのアナタ! ビビっていませんか? 「西洋史をやりたいけど、英語が難しそうだな・・・」とか思っていませんか? 「西洋史は帰国子女みたいに、英語がものすごく得意な人じゃないとできないんだ・・・」とか諦めていませんか!?

大丈夫です(^_^)v

この授業では、指定したテキストを皆さんに訳してもらいながら進みますが、正しく訳せなくても怒られることはありません。難しい箇所は山本が誠心誠意、手取り足取り、懇切丁寧に補足しますし、最終的には正解(みたいなもの)をお配りします。なので、自分が研究したい分野で学術的な英語が必要となる人で、やる気があればどなたでも大歓迎です! どうぞ臆せず受講して欲しいと思います。

使用されるテキストも、受講者の顔ぶれを見て、相応しいものを決めています。例えば、今年はロシア史に関心がある学生が受講しているため、以下の論文を取り上げています。

Alexander Kamenski, “Businesswomen in Eighteenth-Century Russian Provincial Towns”, in: Maria da Salvo et al. (eds.), Word and Image in Russian History, Academic Studies Press, 2015, pp. 206-221.(アレクサンドル・カメンスキー「18世紀ロシア地方都市における女性実業家」)

その内容をかいつまんで紹介しましょう。18世紀のロシアは、ロマノフ朝のピヨートル大帝らによる拡大政策や西欧化により、ヨーロッパ有数の大国となる一方で、国内においては著名な農奴制や都市化の遅れなどにより、社会的緊張が生じていました。

この時代の女性については、いくつかの先行研究がありますが、それらは貴族の上流階層や一部の著名な女性のみを扱ったものばかりであり、さらに当時の女性がどのような経済活動を行っていたのかという点に関しては、ほとんど研究がなされていないとカメンスキー教授は指摘します。

その大きな理由は、「史料」の欠如にあります。過去においては一般的に女性が記録を残すことは少なく、たとえ記録が残ったとしても、それらは貴族や作家など、限られた女性による、限られたジャンルの記録しかありません。しかし、カメンスキー教授は「約束手形」promissory noteという史料を駆使し、18世紀ロシアの「一般の女性」――といっても上層市民の寡婦など限定されますが――の経済活動を明らかにしようと試みます。

ところで「約束手形」とは何でしょうか。簡単に言いますと、それは(実際の貨幣ではなく)書面により決済を行う手段です。約束手形を発行する人(振出人)は、一定の期日までに一定の金額を何らかの手段・条件で支払うことを、書面で「約束」します。その書式は様々ですが、以下のような簡易な書類である場合が多いです。

アメリカ独立宣言にも署名した、18世紀アメリカの政治家ジョサイア・バートレットの約束手形(振出人は文盲のため、受取人のバートレット自身が起草した)

同じような有価証券に「為替手形」がありますが、約束手形の方がより簡便であり、18世紀のロシアでは都市市民を中心に広く普及していました。カメンスキー教授はこの論文で、そこに記される様々な情報をデータベース化し、また時には特定の手形を深く読み込むことで、当時の一般的なロシア人女性の経済活動の一端を明らかにしようとしているのです。

なお、「約束手形」は当事者間(振出人と受取人)で契約が履行されると破棄されることが大半であり、本来は「残らない記録」です。それが何故、残っているかというと・・・(長くなるので省略します)。

どうです? 面白そうでしょ! この授業に興味がある人は、遠慮せず山本までご連絡ください。

では。