「原典講読」で羽根ペン作りをしました

西洋史の山本です。こんにちは。

「原典講読」は、西洋史で卒論を書くことを希望する2年生(以上)を対象とした授業です。西洋史を学ぶ際、「外国語」というハードルのほかにも、過去の記録が伝来する過程が非常に複雑であるという難しさがあります。この授業ではそれを踏まえ、歴史的な記録の生成と伝来の諸状況を、受講者がきちんと理解できるよう心掛けています。

今回はその一環として、受講者に「羽根ペン」を作ってもらい、それを用いて「羊皮紙」に文字を書くという授業を行いました。言うまでもなく、この方法は5世紀頃から18世紀までにおける西洋の代表的な筆記法の一つでした。

羽根ペン、羊皮紙、中世の製法によるインク

受講者は西洋における筆記法の歴史についての簡単な講義を受けた後、まず「羽根ペン」を作ってもらいました。「羽根ペン」quillは文字通り、鳥の羽根(ガチョウや雁の風切羽)を削って作成します。本来は核(軸)が硬い羽根を使うそうですが、今回は某大手ホームセンターで購入したものを使用しました。そのため少し柔らかすぎ苦戦する学生もいましたが、最終的には全員が完成させることができました。

羽根ペンの作成風景

次は完成した羽根ペンと市販の紙と万年筆用のインクを使って、書く練習をしました。日頃使っている筆記用具とはだいぶ勝手が違い、戸惑う学生もいましたが、慣れてくると「意外と書ける!」を驚く人が多かったです。

羽根ペンによる筆記練習1

一通り練習を終えると、いよいよ中世の製法によるインクで「羊皮紙」parchmentへ筆記を行います。「羊皮紙」とはヒツジ、コウシ、ヤギなどの皮を用いた紙で、高価で分厚い反面、柔らかくたたむことができ、また丈夫で長期間の保存が可能です。通常、毛が生えていた面が「表」recto、脂肪や内蔵に接していた面が「裏」versoとされ、それぞれ肌触りが異なるので、まずさわってそれらを確認します。

中世のインクは、「虫こぶ」と呼ばれ多くのタンニンを含む植物の突起(昆虫や細菌により発生します)に鉄を混ぜ、防腐用にワインなどを加えるそうです。なかなか手に入りにくいものですが、今回は「羊皮紙工房」さんにご協力いただき、良い品質のものを使うことができました。匂いをかいでみますと、ほのかにワインの香りがしました。

羽根ペンによる筆記練習2

その後、中世から近世にかけて製作された豪華写本や筆記術書などを見ましたが、それらが途方もない手間や驚愕すべき技術に支えられたものであることが実感できたと思います。「手で考え、足で見よう」が昭和女子大学歴史文化学科のキャッチフレーズですが、今回は「鼻で感じる」ことも含め、その実践ができたといえるかもしれません。

末尾ながら急なご依頼にもかからず迅速にご発送いただきました「羊皮紙工房」の八木様には厚く御礼を申し上げます。