「原典講読」で羊皮紙実習を行いました。 [2019年05月17日(金)]

西洋史の山本です。こんにちは。

前にも紹介しましたが私が担当している「原典講読」は、西洋史専攻を希望とする歴史文化学科の2年生(以上)を対象とした授業です。西洋史で卒論を書く上で必要となる外国語の文献の読解法のみならず、歴史史料がどのような状況で具体的にどうやって書かれているのかも学んでいます。

今回はそうした試みの一環として、「羊皮紙工房」として活動されている八木健治先生を講師としてお迎えして、「羊皮紙実習」を行いました。「羊皮紙」parchmentは、(ヒツジに限らず)動物の皮を原料とした中世における主要な筆記道具でした。また中世末期に「紙」が普及した後も、羊皮紙には特別な価値が置かれていました(例えばイギリスでは、つい最近まで法律は羊皮紙に記されるよう定められていました)。この羊皮紙はどうやって作られるのでしょうか。

論文、講演、ワークショップなど多方面で活躍されている八木賢治先生

今回の実習では、まず3つの動物(ウシ、ヒツジ、ヤギ)の皮から作られた羊皮紙に触れ、それぞれにどのような違いがあるのか、そして用途に応じた使い分けはどうであったのかを学びました。

羊皮紙の肌触りを確認します

その上で、八木先生にご用意いただいた羊皮紙のコレクションを見せていただきました。コプト語で書かれた7世紀の写本から19世紀アメリカの大学の卒業証書までと幅広い羊皮紙の使用例で、なかには非常に貴重な史料も含まれていました。しかも、これらをただ「見るだけ」ではありません。

八木先生「ぜひ、手にとって肌触りを感じてください。・・・みなさんは日本で一番おおく、羊皮紙に触れた大学生となるでしょう」

なんと、貴重の史料を直に触らせていただきました。美術館や博物館では、まずできないことです!

神聖ローマ皇帝カール5世発給の授爵証書(16世紀)に触れる

そしていよいよ羊皮紙の作成に入ります。羊皮紙制作の工程は、まず動物の皮を剥いで汚れを落し、それを消石灰の水溶液に漬け、アルカリにより体毛が抜けやすくする作業から始まります。今回はそこまでご準備いただいた上で、実習に入ります。

各班に配付されたヒツジの皮を手で抜いてゆきます。簡単に抜けるものもあれば、なかなか抜けない頑固なものもあります。工業製品にはない個性といったところでしょうか。

「押す」ようにして毛を取り除きます

体毛が抜けたら皮を木枠に縛りつけて伸ばし、ナイフや軽石で残った毛や脂肪を丹念に削ぎ落とします。なお、この木枠は実習用に八木先生がお作りになった特注品だそうです。

皮を張りつけ、毛や脂肪を削り取ります

ナイフや「千枚通し」など普段は触れることがない道具を使った作業ですが、さすが歴史文化学科の学生は日頃の実践型授業やプロジェクト活動で鍛えられているのか、なかなか器用にこなしていました。

皮に名前を付けていた学生もいました

この後、皮を乾燥させ、さらに研磨することで「羊皮紙」の完成となりますが、今回の作業はここまでです。

最後に羊皮紙への筆記の実習を行いました。羽根ペンはご存知だと思いますが、中世のインクはどのようにして作られるのでしょうか。原料となる虫こぶ、鉄(硫酸第一鉄)、ワイン、アラビアゴムに関する説明を受け(ワインがなぜ必要かわかりますか?)、実際に各自で調合して筆記を行いました。

千年以上も文字が残る驚異のテクノロジーです

このようにして「原典講読」の羊皮紙実習は終わりました。参加した学生の感想を載せておきます。

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こんな貴重な体験ができて本当に楽しかったです! 紙一枚作るのにこんなに手間がかかっていたことも分かったし、インクも長持ちさせるために知恵が詰まっているなぁと感じました!(歴文Aさん)

実際にやる前に羊皮紙の種類とか実際に昔の写本を見て比べたりしたことで実際に作るときに知識としてある方が作業しながら学べて楽しかったです。(歴文Bさん)

想像していたよりとても面白かった、この仕事がやりたいと思った。(歴文Cさん)

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八木先生を囲んで記念撮影

この授業の他にも、昭和女子大学の歴史文化学科では「手で考え、足で見よう」というコンセプトのもと、魅力的な実践的授業が数多く行われております。興味をもたれた受験生や保護者の方は、ぜひオープンキャンパスに足を運んでいただきたいと思います(オープンキャンパスについて詳しく知りたい方は、特設サイトをご覧ください。)。

末尾ながら今回、ご指導いただきました羊皮紙工房の八木健治先生に、あらためまして御礼を申し上げます。