授業紹介:文化財保存学基礎 Part1 [2019年08月06日(火)]

こんにちは。歴史文化学科2年生の伊藤です。今回は私が受講している文化財保存学基礎について紹介したいと思います。

文化財保存学基礎は毎週木曜日の3限目に行われています。授業を受け持ってくださっている田中先生は火縄銃や日本刀などの鉄文化財や彩色材料の材料科学的研究をしています。

田中眞奈子先生

この授業は文化財の保存に関する基礎知識の習得を目的に、文化財に用いられている様々な材料に焦点をあて、それらの特徴と具体的な保存・修復技術について学びます。この授業では主に日本の伝統的な文化財について取り扱うので、それらに用いられている材料の特徴、内的外的条件によってそれらに生じる変化(劣化挙動)について理解し、文化財の保存に必要な知識を得ることを目標としています。

ただ先生の話を聞くだけでなく文化財にも用いられるような材料を実際に触れることで、より文化財について理解を深めています。例を挙げるならば、日本画や壁画に用いられてきた染料、顔料、日本画において重要な役割を果たす膠(にかわ)。この膠というものは顔料を紙や絹に接着させる役割やにじみ防止などの機能があります。原料は動物の骨、皮等でありこれらを水と共に煮出した有機たんぱく質で、原料中に含まれるコラーゲンをその母体としています。実物を見た時の素直な感想は大きな芋けんぴのようだなと思いました。匂いはあまりしませんでした。

顔料の原料となる様々な鉱物

大きな芋けんぴ…ではなく立派な膠

このように五感を使う楽しい授業です。この文化財保存学基礎は外部からも講師を呼んで、専門性の高い内容の授業も行っています。今回私が紹介させていただく外部講師の先生は、東京都埋蔵文化財センターからお越しいただいた鈴木伸哉先生です。鈴木先生は、出土木製品の樹種同定・年輪年代・材料分析に基づく中世・近世の森林資源利用史の研究をなされています。

鈴木先生の研究を分かりやすく紹介すると、私たちにとってとても身近な存在である「木」。建造物はもちろんのこと仏像にも木材が多く使われています。他にも遺跡などを発掘すれば昔の人々が使用していた木でできた道具が出土することがあります。こうした文化財に何の木が使われているのかを調べることにより、修復時に役立つ情報や、木材利用の歴史を知る手がかりを得るための研究になります。どうやって知るのかというと、顕微鏡を使い、木を構成する細胞のかたちや大きさ、並び方(木材組織)を観察します。観察することで、木質文化財の木材組織が判りそれに伴って文化財の木の種類が判明するのです。

そして今回は特別に鈴木先生が樹種同定を授業で実践してくださいました!

鈴木先生のお話を聞いています

樹種同定標本は徒手切片法というものです。試料の木材を髭剃り用のカミソリで平行に押し進めて切ります。(この時あらかじめ切りやすいようにお湯で煮て下処理などをしておきます。)試料の木口面、柾目面、板目面の方向がはっきり見えるよう切るのがコツです。方向がずれているときちんと観察できなくなります。あとはプレパラートを作って完成です。鈴木先生はものすごく簡単そうに手際よく作っていましたが、素人が作ろうとすると大変なことになります。

様々な割り箸の樹種を同定する鈴木先生

残念ながら横断面の写真がないのですが、どの横断面も規則正しい模様でとても綺麗でした。綺麗だと感じたのは模様の中にあるパターンのようなものがあって、なんとなく模様に見えているのかなと思いました。人の手が加えられていない自然物なのにどうして規則的な形になるのか考えてみたのですが、効率を重視したからではないかと思いました。効率よく栄養分や水分を吸収するにも、また、全体にそれらを均等に配分するためにも、形が揃っている方が何かと都合がいいのではないかと考えました。動物の体の中のもの(細胞など)も大体対照的な形をしているので、効率化を図ると形は美しくなるのではないかと思いました。

文化財保存学基礎の授業は実際に手に触れることや体験することが多い授業なので毎回楽しいです。また学芸員課程の選択必修でもあるので楽しく授業をしつつ資格の単位にもなるのでお得感があります。学芸員を目指している方もそうでない方もおすすめの授業です!