2020年度前期特殊研究講座がオンラインにて開講されました [2020年07月05日(日)]

歴史文化学科教員の牧野元紀(准教授・東洋史)です。
さる6月24日、歴史文化学科では倉田徹先生(立教大学教授)・倉田明子先生(東京外国語大学准教授)をお招きし、特殊研究講座「香港危機のこれから:デモから国家安全法へ」をオンラインで開催しました。

香港を対象とした中国政府による国家安全法が議決・施行される直前のこのタイミングで、香港の政治・歴史研究のエキスパートでいらっしゃる両先生にご講演頂くということで、開催前から学内外で大きな注目が集まっていました。

前半の講演では、香港が19世紀半ばのアヘン戦争以降にイギリスの支配下で貿易都市として出発し、以降は大陸からの政治的経済的束縛を逃れる自由都市として発展を続けてきたことが歴史的に理解されました。そして、その自由こそが香港の拠って立つ都市のアイデンティティであり、国家安全法の施行によって根本的危機に陥っていること、そしてそれは日本に住む私達にとっても決して対岸の火事ではないことが明快かつ丁寧に示されました。

後半では、パネリストとして香港出身で歴史文化学科4年に在学中のチョンさんと、香港在住で日本に留学経験のあるエスターさんのお二人を迎えて、両先生との公開ディスカッションが行われました。ZoomのQ&A機能も用いて歴文生との間でも白熱した議論が展開されました。香港市民のなかでも世代や立場によって考え方にいろいろな違いがあること、香港の若者と日本の若者では民主主義に対する意識の落差があることなどが明確となりました。コメントのいくつかを以下にご紹介します。

今回ずっと関心のあった香港の今について有識者である先生方、香港人のお二人から実際に伺うことが出来て嬉しかった。日本は政治に関する関心が本当に低く、バイト先のパートのおばさんも今まで一度も選挙に行ったことがないと言っていて驚いた。香港の人が政治に関心が高いのは生活に実際に影響が大きく、また政治に対する教育もされているからだと分かった。日本も見習って政治を生活に取り入れて考えるよう教育をしなければならないと感じた。また、男女差別が未だ日本では深刻な中、「男女平等っていうことが不平等」というチョンさんの言葉にまさしくそうだと思った。しかしながらそう声にしなければ変わらない日本の社会体質だから仕方がないのかなとも思う。今日本が香港にできることは何か、私はまず歴史を知ることだと考える。無関心でいる前に知ってから自分で考えることが私たちにとって必要だと感じた。【歴文3年匿名】

今回の特殊研究講座を通じて香港デモが決して他人事ではないこと、また、自分の政治への関心の低さを痛感した。また、チョンさんが政治への意識が低い故にいつの間にか決定した法案が気づいた時には手遅れで、自分の権利が危ぶまれるような恐ろしい事態を招くかもしれないという内容や、香港の方のデモに参加する際の心情をお聞きして、主張できるときに主張をきちんとするべきであり、そのために常に世界情勢・情報に意識を持つ必要があると感じた。破壊を伴うデモに対する賛否両論は、香港の中でも様々あるようだ。しかし、日本のように政治に関心も持たずに平和だと過信し、デモ隊を少し異端として扱う、政治に関する考えを発信することをあまりよしとしない等の風潮は政治への参加をより遠ざけてしまう要因なのではないかと感じた。【歴文3年匿名】

香港の独特な環境はイギリスの租借地であったことが大きな要因となっていると考えられる。また、その環境の中で自由な経済活動や言論活動を行ってきた香港人にとって、社会主義で言論の統制などを行っている中国共産党統制下になることは、危険を感じることだと分かった。特に香港人にとって自分たちの自由を主張することは、異なった主義がすぐそばに存在しているからこそ当たり前のことであり、それに伴い若者の政治的活動も活発になるのだと感じた。日本でデモ活動が多くない理由は教育方法の違いによるものもあるだろうが、日常生活において自由を侵されるという危機感がなく、ある意味平和な環境が原因ではないかと感じた。【歴文3年SK】

今回の特殊研究講座は、ニュースなどのメディアにも取り上げられることも多い香港のデモについてだったのでとても身近な内容に感じ、聞き入れやすかったです。なぜこんなにも香港のデモ活動が問題となっているのか、若者はなぜこんなにも反対しているのか、そもそも何が問題となっているのか、香港と中国の関係についてよく理解できたと思います。今回の内容は歴史という私たちが普段学んでいる内容が如何に現代で重要視されているのかが明確に分かるお話でした。特に私のイメージでは、もともと香港は中国の1つというイメージよりイギリスの植民地から独立した国というイメージだったので、こんなにも政府が強硬手段をとるのに意外性を感じていましたが、経済的な面なども配慮することで理解できました。若者がデモを行う仕方も新しい方法がとられ、私たちもこの問題に注目することで自身の国への意識を高める必要があると感じました。【歴文2年NS】

最後に、チョンさんから一言。

「今回の講座は私にとって違う視点から香港を見ることができるいい機会だったと思います。香港はイギリスの植民地時代は、平等でもなく、民主的でもない時代でしたが、今日多くの香港市民が植民地時代の生活のほうが今よりも良いと言っていますので、やはり中国に返還された後、不満を持つ人々が多くなると考えられます。講座の後半のディスカッションで私はパネリストの一人として参加させていただき、香港のエスターさんと講師の倉田先生とお話ができてとても嬉しかったです。私は去年香港に帰っていませんので、現在の香港の状況はそんなに詳しくはありません。エスターさんから直接皆さんにメッセージを伝えて頂くことで、資料からだけではなく、直接香港にいる方から今実際にどういう生活をしているのかを知ることができたと思います。皆さんからは私が想像していた以上にたくさんのご質問を頂きました。あいにく全てに答えることはできませんでしたが、日本の学生の皆さんも香港の現在の状況に対して以前よりも身近な問題として関心を抱かれたのではないかと思います」

ご多忙のなかご講演頂きました倉田徹先生と倉田明子先生、ディスカッションで貴重なご発言を頂きましたエスターさんとチョンさん、有難うございました!