【次世代継承PJ】八王子車人形 西川古柳座の定期公演を観劇しました~その①~

6月23日(日)に歴史文化学科4名で八王子車人形西川古柳座で行われた「八王子車人形【国・重要無形民俗文化財】定期公演」を観劇しました。

八王子車人形とは、ろくろ車(前に二つ、後ろに一つの車輪がついている箱車)に腰掛け、一人の人形遣いが一体の人形を操る特殊な一人遣いの人形芝居です。そして、2022年に国重要無形民俗文化財に指定されました。
西川古柳座さんは週に1〜2回の定期公演を行っています。地元の皆様に気軽に見ていただきたいという思いで初めました。そのため料金は大人1000円に設定されています。

6月23日(日)に行われた演目は、『三番叟』、『東海道中膝栗毛(卵塔場の段)』、『洋舞』でした。『洋舞』では、1981年乙女文楽の技法を取り入れた「新車人形」の技法を遣っています。
「新車人形」は、人形遣いが装着する肩金を取り付けた器具を人形に固定させ、人形の首左右に取り付けた紐を人形遣いの頭に懸けることで首の動きを人形遣いの頭の動きに連動させることができ、両手遣いを可能にした技法です。通常、人形のかしらを持つため使用できない左手も右手と同じように使えるため、人形の左手を直接人形遣いの左手で動かすことができ舞踊に用いられます。演目の間には、車人形の説明や演目の解説があります。初めて人形芝居を見る人でも、理解できる工夫がなされていました。

そして、終演後には様々な体験の機会がありました。
まず終演後に「おひねり」をさせていただきました。「おひねり」は、演者に向かって「よいものをみせてくれてありがとう!」という感謝の気持ちや応援の気持ちを形にしたものです。小銭を紙に包み人形や人に当たらない程度に投げ入れます。投げ入れるタイミングは、座の皆さんが教えてくださったので、気軽に文化に触れることが出来ました。

さらに、人形を持つ貴重な体験もさせていただきました。
重さが想像以上にあり力の必要性や、かしら、右手の動きをだすのに繊細さが求められると感じました。
また顔が割れたり、変わったりする仕掛けのあるかしらを実際にやってみると、上手くできず、演じることの大変さや凄さを実感しました。

定期公演後は、プロジェクト長がインタビューアーとなって西川古柳座の次期家元である西川柳玉さんにインタビューを行いました。インタビューの内容を紹介します。

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― 人形芝居をはじめられたきっかけは?
「保育士を目指して、福祉大学に在学中、たまたま家元が『シャンクス・メイア』という海外のプロのパペッターの方と車人形でコラボをしていて、それに参加しました。最初は「鹿の前足」などの役をやり、徐々に車人形に乗るなどして面白さに目覚め、人形芝居をはじめました。最初はそこまで人形に興味は無かったのですが、西川古柳座の雰囲気がアットホームだったので、座員さんの人間味に惹かれてこの世界に入って今7年目になります。」

― 人形芝居で楽しさ・やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?
「無表情な人形がすごく多いんですね。動きやしぐさで感情、喜怒哀楽をお客様に伝えなければならないのですが、それがお客様に伝わった瞬間がすごい嬉しいかなと思います。」

― 人形芝居を7年続けて、人形芝居は自分の生活や、人生のなかでどんな存在だと思っていますか?
「ネガティブな発言になってしまうのですけど、僕は正直これしか取り柄がないので、やっぱり生活の一部でありますし、常に考えて、新しい演目を更新していくということを目標に取り組んでいます。のめり込めば芸能の世界は奥が深いし溺れていってしまう、知れば知るほど溺れていくものです。僕は始めたのが遅く、より多く修行をしていかなければならない身ですので、家元に教えていただいて、知らないことを無くしていければと。将来的には、襲名して西川古柳になったときに皆さんが付いて来てくれるような、そういった大きい存在になれたらなと思います。」

― 人形芝居を続けていて、大変なこと、困ったことはありますか?
「人形を作ることがすごく難しいかなと。縫い物とか、すごい繊細な手の動きが必要ですので。人形芝居が終わったら人形をつぶすと言うんですけども、人形を1度崩して全部剥がしてぬがして裸にするんです。それをまた新しい胴体を作って着付けていくという作業がすごく難しくて…。人間と同じように重ねて着ていくのですが、重ねるごとにどんどん糸が通らなくなったり、すごく固くなったり。あとは縫う箇所がすごく多いので、覚えることもとても多いですね。やっぱり人形作りが1番今は苦労していますね。」

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今回はここまで!
インタビューはその②へつづきます!