美術教育はよく、「美術の教育」と「美術を通しての教育」に分かれると言われます。
美術(表現+鑑賞)そのものの教育と、美術を媒体とした人間教育という意味で、教科全体を表しています。
また昨今の議論では、美術(あるいは図画工作、表現、造形、アート)で必要な能力は、学校教育で必要とされる「生きる力」そのものであって、想像力や創造性をともなう活動は全体的なものであるという意見もあります。
さらに言うならば、
教育者のスタンスとしての「美術と教育」も大事であるなと、私は考えています。
「美術」の実践者が「教育」にかかわるという意味です。
美術の実践者が教育にかかわることで、制作の質や工夫の厚みにもつながる一方で、美術教育の本質的な命題に触れる可能性も持っています。
ということで、早川ゼミでは、美術を実践してみることも大事にしています。
昨年度後半は鍛金作家の吉田康平先生にお越しいただき、錫による鋳造の課題を教えて頂きました。
まず自動車のボディの型を成形する際に使用する、インダストリアルクレイ(ID粘土)を60℃に温めながら原型をつくっていきます。
適度な厚みの塩ビ板で、造形物よりふた回り程度大きい型をつくり、シリコンを流し込みます。
1日たってシリコンが固まったら、凸凹になるように型を切り、中のID粘土を掻き出します。
そしてしっかりと周辺を板で固定しなおして、鍋で溶かした錫を鋳込みます。
(水滴が入ると水蒸気がはじけて大変なので、ゴーグル・革手袋でガードします。)
錫は融点の低い金属で、231.9℃でとけます。
冷ましたのちに、型を割り、流し込む道になっていた部分を切り出して、金属鑢で整えます。
金属を加工することは日常であまりないので、個体が液体状に変わるところなども面白い作業でした。
このあと磨いたり、鍛金用の金づちでたたいて切り口を綺麗にしてオブジェの完成です。
吉田先生のホームページはこちらです。
http://kohei-yoshida.sakura.ne.jp/