2020年度FD講演会

開催日:2020年6月17日(水)16:30~17:30、
場所:Zoomウェビナー
テーマ:「After コロナを見据えた学びを求めて」
講師:平井 聡一郞 氏 (株式会社情報通信総合研究所
ICT リサーチコンサルティング部 特別研究員)
参加者数:210名

コロナ禍後、従来の教育環境がICTを中核とした環境にどのように移行していくのかということについて、同災害発生直後の教育実態に鑑みながら講演が行われた。要旨は次の通りである。
第1に、コロナ禍のような非常事態に対応できる、ICTを中核とした教育環境の整備が益々重要になる。同災害に対応するための教育手段として導入された、初等中等教育における同期型のオンライン授業の成功事例は熊本市に見られるものの、同授業の全国的な導入は限定的であり、従来の紙媒体の非同期型授業が行われているのが実態である。コロナ禍に対応した教育が効率的に実施されていないのは、ICTリテラシーの低さと非常時に対する危機意識の不足が起因している。この反省が、知識伝達中心の一斉授業から多様な学びを可能にするGIGAスクール構想の実現を加速化するであろう。
第2に、今後、学習者が主体的に考え、行動する能力を獲得するための効率的な教育環境が整備される。その結果、我々が現在携わっている仕事のバリエーションは大いに変化し、コミュニケーション、クリエイティビティ―、スペシャリティーが一層重視される社会に移行する。
第3に、ICT教育により、知識集約型の学習はAIに担わせ、技能集約型の学習はロボットに担わせることになる。つまり、知識はオンデマンド、技能はAIドリル、探求力はオンラインというような学習手段の分別が鮮明になる。学習量よりも、むしろ、学習方法を学ばせることに主眼を置く教育環境が整備され、知識のインプットよりも、能力のアウトプットを重視したアプリも開発される。
第4に、ICT教育によるコミュニケーション能力の育成については、現行のコミュニケーション教育に劣らない効果が期待できる。確かに、コミュニケーション能力は、ICT教材に頼るよりも、むしろ、人と人が対面して意思疎通することにより向上すると考えられる傾向がある。しかし、オンラインとオフラインの異なる場面においてコミュニケーション能力を発揮できるICT環境の整備は、スーパーゼネラリストの育成につながると考えるべきである。
 最後に、上の4つの視点は次のように総括できる。ICTによる学習は自力で行動をコントロールできる能力の育成につながる。主体的な行動制御能力を備えた人材の社会進出により、効率的なテレワーク社会の到来が期待される。
講演中Zoom画面を利用した質疑応答も行われ、盛会のうちに終了した。 
以上