2024年5月15日(水)17:00~18:00
場所:グリーンホール
テーマ:生成AIと教育のあり方について
講師:利根川 裕太氏(特定非営利活動法人 みんなのコード 代表理事)
本講演会では、生成AIと教育のあり方について、生成AIの仕組みや小中高での実例を交えて、ご講演頂いた。また、本講演会では、リアルタイムQ&Aツールである「LiveQ」を使用し、インターラクティブな講演会となった。概要は以下の通りである。
・生成AIとは何なのか
ChatGPTのような、一般的に認識されている生成AIには「生成AI」「対話型AI」「LLM」「コパイロット」の4つの技術的な側面がある。
「生成AI」はクリエイティブな作業をするのが得意で、正解・不正解といった問いに答えることは不得意。
「対話型AI」は人間と自然な会話ができるAIであり、適切な応答を返すことができる。問いに対しては、1回で答えを引き出すのではなく、何度も対話を繰り返す中で、より良い答えに近づいていくのが特徴。
「LLM:大規模言語モデル」は膨大な量のテキストデータから学習し、文章生成、翻訳、要約などの言語処理タスクを実行できる。数値計算は不得意。
「Copilot」は人間と協同しながら作業を支援するAIアシスタント。単に指示に従って、タスクを実行するだけでなく、状況を理解して、人間のパートナーとして、提案やアドバイスを行うことができる。
これら4種類の技術を組み合わせることで、様々な生成AIサービスが生まれている。
・生成AI 100校プロジェクト
利根川氏が代表を務める「NPO法人 みんなのコード」が実施している、小学校、中学校、高等学校での生成AI導入プロジェクトをご紹介いただいた。例えば、高等学校では、「情報」科目向けプログラミング授業教材として、「Pythonサンドボックス」を提供。「Pythonサンドボックス」は、生徒が自由にPythonのプログラミングができる教材であり、AIアシスト機能を搭載することで、発生したエラーを日本語で説明し、解決するためのヒントを提供できる点に特徴がある。
この生成AI教材を使用することで、生徒自身は、教員の助けを待たずに問題を解決し、自力でデバッグ(プログラムの精査やバグの修正)することが可能となり、より深い学びにつなげることができている。また、教員側も、スムーズな授業運営を行う事が可能となっている。
・教育における生成AIの可能性(質疑応答への回答を含む)
今後、生成AIが様々な所で導入されることで、自分で学習、創造できる子供が増加するだろう。例えば、今までは、人間がアプリ等の創造的なモノを作成しようとした場合、プログラミング知識が制約になり、作成が難しかった一面がある。ところが、生成AIの導入により、プログラミングを生成AIに手助けをしてもらえることで、誰もが、作成可能となり、新しい価値を生み出すことができるようになる。教育面においても、学習プロセスの一部に生成AIが組み込まれることは当たり前になることが予測される。学習者が、上手く生成AIに手助けをしてもらいながら、個別最適な解を見つけることになるだろう。
また、生成AIの登場により、大学の授業におけるレポート作成、評価の在り方も大きく変わるのではないだろうか。今までは、「物事を調査し、まとめる」という一連のレポート作成作業は負荷が高かった為、教員は、授業の期末課題としても評価価値がある、とみなしていた。しかし、生成AIの登場により、レポートの作成ハードルが低下したと言えよう。それを踏まえると、今後、大学の授業における評価手法に関しては、レポート課題だけではなく、調査プロセスを口頭試問で実施した上で総合評価するなど、教員側は評価手法を再考すべき時が来たのかもしれない。
以上、随時、活発な意見交換が行われ、盛会のうちに終了した。