現代教養学科ブログリレー―初めての粕谷ゼミ読書会<Part1>―

皆さん、こんにちは。粕谷ゼミ3年Y.Y.とY.A.です。

7月に入り、気温の高い日が徐々に多くなってきました。

前期授業も終盤に差し掛かりました。そろそろ最終課題を着々と進めていきたいです。

 

さて、先日粕谷ゼミでは、恒例の読書会を行いました。

この読書会では、事前に一人一冊以上本を推薦・投票をし、全員で同じ本を読みます。

私たち3年生にとっては初の読書会でしたが、互いの意見を交換し合いとても有意義な会となりました。

今回読んだ本は、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社、2019)です。本屋大賞2019ではノンフィクション本大賞に選ばれています。以前、シム先生もこの学科ブログで紹介されていました。

アイルランド人の夫と息子とともにイギリスで暮らす著者が、中学生の息子の学校生活を中心にその日常をありのまま描いた一冊です。

息子のまっすぐな言動が本質を突いていて、思わずドキリとさせられます。

主な舞台はイギリスですが、日本の社会や私たちの生活にも新たな視点を与えてくれます。

 

 

 

以下、学生の感想・意見をご紹介します。

【みんなの感想】 (特に面白い・関心を持った箇所をボールドにしました)

 

E.T.

良くも悪しくもイギリスの成熟した社会を描いている作品だと思う。日本社会と違った人間関係が展開され、それぞれが自分らしく、淡々と生きている。日本人は人と同じでないことが不安であるという世界に生きている。この違いを軽いタッチで描いているのが日本人の興味を誘ったのではないだろうか。

 

Y.A.

第7章「ユニフォームブギ」内の、「君は僕の友だちだから」というテーマが印象に残った。制服のリサイクルを行っている主人公たちが、貧しい環境にいるティムを傷つけずに制服を渡す方法を思案する。この場面から、傷つけずに手助けすることの難しさを感じた。優しくしたいという気持ちがあっても、方法を間違えると逆に傷つけてしまうかもしれない。

また、第5章「誰かの靴を履いてみること」もかかわっていると感じた。自分の感情だけで動くのではなく相手の立場になって考えることが、優しさを自己満足にしないために必要なプロセスだと思う。

「どうして僕にくれるの?」とティムに問われた息子の答えが、とてもシンプルで心に響いた。何か手助けをするとき、無意識に相手を下に見ていることがある。しかし、本当は誰もが対等な立場で、お互いに手を差し伸べ合うべきだと感じた。「君は僕の友だちだから」という答えにつまった純粋な優しさに感動した。

 

R.M.

この本を読んで、英国と日本は文化や教育、生活環境がこんなにも異なるのかと驚いた。人それぞれであると思うが、私だったら日本よりもリスクがあって多くの課題が存在する英国で中学生の子どもと生活しようとは思わないし、思春期の子どもが向き合うにはあまりにも過酷な出来事ばかりである。もっと安全な国で生活をしたいと思う人が多いのではないだろうか。

この本を読んで特に私が印象に残ったシーンは、FGM(女性性器切除)についてである。英国の性教育の進歩と日本の性教育不足を改めて感じたが、ここまで深く教育する必要はあるのかと少し疑問に思った。しかし、大切なことではあるし、FGMの対象が中学生であるからこそ、どういったものか簡単に知っておく必要はあると考える。

グローバル化が進む現在、生活している中で「多様性」という言葉をよく耳にする。本書でも書かれていた通り、「多様性は物事をややこしくするし、喧嘩や衝突が絶えないもの」であるからこそ、互いに尊重しあいながら生きていくことが重要であると感じた。

 

M.A.

エンパシーとはなにかについて自分で「誰かの靴を履いてみること」だと息子が言った部分が印象的だった。自分とは違うから、わからないからこそその人の立場になって考えたり想像することの大切さと難しさについて考えさせられた。

イギリスで子供の時にこのことを習っても差別をしてしまうことからただ習うだけではだめで、でも経験してないことを分かり合うのも難しい。日本でもSNSの誹謗中傷があったり、世界的に見ても人種差別やジェンダーの偏見がまだある世の中である。多様性に関して書いてある部分での喧嘩や衝突が絶えないのも、相手の立場に立って考えることができてないからではないか。想像力を働かせ、色々な価値観や考え方があって当たり前でそれを受け入れられるような世の中になれば生きやすくなる人がもっと増えるのではないかと思った。

 

M.M.

多様性だらけの今の世界が抱えている社会問題をぎゅっと詰め込んで、その一つ一つの問題について考えさせられる一冊でした。政治問題、経済的格差、LGBTQ、貧困、人種差別、偏見、宗教の違い、アイデンティティ、英国の現状、世界情勢、教育事情、階級社会。本を読み終えた頃には、この筆者であるお母さんの息子さんと共に成長できたような気がしたのと、本の帯に書いてある通りまさに「一生モノの課題図書」だと思いました。16章から構成される日記のように書かれたこのお話はどの章も印象的でしたが、タイトルの「ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー」の意味が最後に納得できる形で読み終えられるところに強い魅力を感じました。様々な社会問題があるこの世界で広い視野と深い洞察力を持って生きていきたいです。

 

Y.K.

私が最も印象に残った場面は、6章のプールサイドのあちら側とこちら側だ。作者の息子が参加した中学校対抗の水泳大会の仕組みに非常に驚いたからだ。そこには日本で育った私達には予想すらつかないイギリスの階級社会が露わに存在していたのである。その大会は私立の中学校と公立の中学校、2つの学校が同じ1つのプールで競技を行う。しかし、公立の中学校はぎゅうぎゅうで押しつぶされそうな中ストレッチをし、反対側のプールサイドではゆったりとしたスペースを確保した私立の中学校の生徒たちがのびのびとストレッチをする。それだけではない。公立と私立では競技も別々なのである。両者は徹底して分けられている。そしてそれに疑問を抱く者さえいない。まさに水泳大会は英国社会の現実の縮図だ。日本ではここまで格差が露呈することは少ない。序盤から私はあることに気づいた。それは親の教育への関心が非常に高いことだ。イギリスの中学校はランキングさえ存在する。そのため小学校選びも重視され、その関係で引っ越す人も少なくない。ここまで親が必死になるのも、こうした過酷な階級社会で生きていく上で考えざるを得ないのだろうと思った。私が中学生のとき体験した水泳大会とは全く異なる世界が存在したことに、大きな衝撃を覚えた。日本の貧困層にある子供たちは、必死にその事実を隠すと思うが、イギリスでは隠す余裕すらない子ども達が多く存在することをこの本を通じて分かった。ティムのような生徒が少なからず存在する。それが現実だった。この本は筆者が体験した日常的な出来事から、社会問題や道徳、独自の哲学まで非常に分かりやすい形で読者に伝えてくれている。違う世界を覗いた上で私達はこれからどのような未来を築いていくべきなのかを考えていきたい。

 

【みんなの感想】は、<Part2 >へと続きます。

(粕谷ゼミ3年メンバー)