【鳥越ゼミ】セクシャルヘルス対策の最前線へ!(新宿二丁目のコミュニティセンターakta訪問)

こんにちは!鳥越ゼミ3年の三浦です。

私たちは7月に新宿二丁目にある特定非営利活動法人aktaを訪問しました。aktaはHIV/AIDSなどのセクシュアルヘルスの情報収集や相談、そして関連イベントへの参加ができるコミュニティセンターです。「デリバリーボーイズ」という、新宿のお店を回って啓発を行う活動もしています。

aktaでは理事長の岩橋恒太さんより、HIV/AIDSについてのレクチャーを受けたあと、aktaのメンバーで大学院生でもあるともひろさんにも加わっていただき、ディスカッションをさせていただきました。

みなさんはエイズについてご存知ですか?1980年代にアメリカで「免疫を壊す恐怖の病」という形で耳目を集めるようになったHIVは、1985年に日本初のHIV陽性者が確認されると、「エイズパニック」という大きな混乱を引き起こしました。感染者は実名を流されて苛烈な差別を受けたり、感染者が住んでいた地名のナンバーをつけた車が避けられたり、公衆浴場で特定の人の入浴が拒否されたりしました(コロナのときととても似ているように感じます)。このエイズパニックによって、「ちょっと触っただけで感染する病」「死の病」のようなHIVについての誤った理解が急速に世に広まりました。

これ以降、日本だけでなく各国がHIV対策に乗り出します。たとえばオーストラリアでかつて実際に流されていたHIV感染防止に関するテレビCMでは、死神が人々を殺していく映像が流され、最後に”AIDS. PREVENTION IS THE ONLY CURE WE’VE GOT”というテロップが出るというおどろおどろしいものでした。この映像は、恐怖によってHIVを予防しようとするものです。こういったアプローチを“fear campaign””と言います。しかし、残念ながらこのfear campaignは、恐怖を煽ることで、HIV感染者への差別と排除の意識を助長してしまいました。この差別と排除の意識は、ゲイ、バイセクシュアルの男性、薬物使用者、セックスワーカーやトランスジェンダー、移民などのマイノリティグループに向かいました。そして、この意識の広がりは、感染したかもしれないと不安を持つ人が、実際に検査や治療などの必要なサービスを受けることへの阻害に繋がってしまいます。HIVに感染していることが明らかになってしまうと差別されるから、検査はしないという判断です。コロナ禍の初期にも、こうした判断がたくさんなされたのではないかと想像されます。恐怖は、パンデミックを抑えることはできないどころか、むしろそれを助長してしまうことを、このエピソードは教えてくれます。

しかし、現在ではHIVについての研究が進み、様々な国で科学的知識にもとづいた検査や治療、そして啓発活動が行われています。HIVの治療薬も進歩し、いまでは2ヶ月に1回の筋肉注射のみで、しかも副作用も少ない薬が出てきています。HIV陽性者の余命も、HIV陰性者とほぼ同じにまで延びています。

さらに、セクシャルマイノリティとメンタルヘルスに関することも新たに学ぶことができました。認定NPO法人虹色ダイバーシティによると、セクシャルマイノリティの方(特にトランスジェンダーの方)は、そうではない人と比べて2倍、メンタルヘルスに不調をかかえているという結果が出ています。その原因として、社会的に孤立していたり、医療従事者側が誤解から差別に加担してしまうなどの理由があるとわかりました。誰一人取り残さない社会にするためには、改めて、様ざまな立場の人が存在することについて理解を深めていかなければならない事を実感しました。私が普段何気なく使用しているサービスでも、別の誰かにとってはたどり着く事が困難なサービスの可能性があるという事実を、決して忘れないようにしたいです。

今回、実際に社会で活動している方に話を聞くことができたことは、大変大きな学びになりました。また、自分が知らなかった現状について知り、新たに問題に向き合うきっかけにもなりました。aktaの皆さま、本当にありがとうございました!