みなさん、こんにちは。現代教養学科では、社会調査士という資格を取得できるカリキュラムが用意されています。今日はその科目の一つ「社会経済統計Ⅰ」について紹介します!
そもそも社会調査とは、人々の意識や行動の実態をとらえるために、様々な社会事象の観察を通じて収集したデータを分析・解釈することを指します。社会調査は、社会学だけでなく政治学や経営学、観光学など幅広い学問において用いられる手法です。そして、社会調査士とは、そのような社会調査に関する基礎知識と実践的技能を身に着けたことを証明できる民間資格です。スタディサプリ進路で「社会調査士」と入力して検索すると113もの大学が表示されます。メジャーな資格とまでは言えませんが、実務において非常に実践的な知識を学べるカリキュラムであると言えます。
一般社団法人 社会調査協会によると、社会調査士とは「社会調査の知識や技術を用いて、世論や市場動向、社会事象等をとらえることのできる能力を有する『調査の専門家』のこと」を指します。社会調査士資格の取得には、社会調査における調査企画から報告書の作成までの全過程を学ぶことが必要です。これらを体系的に学ぶことで、実際に社会調査を実践できるようになるだけでなく、既に調査結果として出されているデータの妥当性の確認や問題点の指摘をすることができるようになります。
現代教養学科では、この社会調査士取得に関連した科目が専門科目として卒業要件単位に認定されます。資格取得を目指しながら卒業要件もクリアしていけるのが魅力です。また、本学科卒業において必須となっている卒業論文の執筆においても、社会調査士科目で学んだスキルが活用できます。実際に資格を取得できるのは卒業時ですが、三年次にはキャンディデイト資格という「社会調査士の資格取得を目指して順調に単位取得できている証」をとることができ、これを就職活動で用いることができます。
今回は、資格取得に必要な科目群のうちの「社会経済統計Ⅰ」という授業をご紹介します。「社会経済統計Ⅰ」は社会調査士の取得に必要な科目のうち、D科目「社会調査に必要な統計学に関する科目」にあたります。一般社団法人社会調査協会のHPによると、当科目は「統計的データをまとめたり分析したりするために必要な、推測統計学の基礎的な知識に関する科目」とされています。実際に現代教養学科の「社会経済統計Ⅰ」では、サンプリングの方法や統計的検定の考え方と実践を学ぶことができます。
また、当授業では平均値や分散、累乗などのこれまでに習ってきた概念の中で、この授業で習得する理論の理解に必要なものを復習していきます。そのため、高校時代に数学に自信がない人も問題なく内容を理解することができる授業スタイルです。
授業内で扱った理論のうち「カイ二乗検定」について簡単に説明します。カイ二乗検定とは、クロス集計表において「行と列は独立であるか」を検定するものです。これは同じ集団に二つの質問を投げかけて、それぞれの答えに関連性があるかどうかを調べる時などに用いられます。授業内では、仮想的なデータではありますが「海外生活経験の有無」と「海外留学希望の有無」とのクロス集計表を使った例で説明されました。
この例でカイ二乗検定を行うと、「海外生活経験の有無」と「海外留学希望の有無」とが互いに関連していない独立した変数であるかを検証することができます。
まずは「期待度数」という、海外生活経験の有無と海外留学希望の有無とが独立であるときの期待値を算出します。期待度数は、行と列それぞれの合計の割合を用いて求めることができます。表の一番下が合計人数であるため、全体での比率は海外留学希望あり:海外留学希望なし=101:64ということがわかります。同様に、海外生活経験あり:海外生活経験なし=89:76です。海外留学経験あり-海外生活経験ありの場合、全体人数のうち165分の101、さらにそのうちの165分の89を占めると考えます。あり-なし、なし-あり、なし-なしのそれぞれにおいて先ほど出した割合をあてはめた数値を算出したものが「期待度数」の表です。
算出した期待度数と実際のデータである観測度数とを比較したときに、差が大きい場合は「行と列が独立である」という仮定がそもそも正しくない可能性が高くなります。この可能性を数値で議論するために、カイ二乗統計量を算出します。
カイ二乗統計量は、Σ[(観測度数-期待度数)²÷期待度数]で計算でき、カイ二乗=35.24となります。授業では、この35.24という数値が観測度数と期待度数のズレを表すことを式も見ながら理解していきました。最後に、行と列が独立なとき、この35.24というズレが発生する確率p値を求めます。p値が基準、例えば0.05よりも小さい場合は、行と列は「独立ではない」と判断します。今回の例では、p値は0.00なので、「海外生活経験の有無」と「海外留学希望の有無」は独立していない、つまり関連しているとわかります。
今回ご紹介した「カイ二乗検定」は、社会調査の実践において非常に役立つ検定です。少し難しい説明となってしまいましたが、実際の授業では基礎知識の復習から丁寧に学ぶことができます。質問をする時間がとられていたり、先生が授業内で巡回してくださる時間があったりと、一人一人の理解に応じた授業展開が魅力です。数学に苦手意識がある方も安心して学ぶことができる環境が整っているので、ぜひ社会調査士資格取得に挑戦してみてください!
(現代教養学科 佐久間)