こんにちは,3年木村ゼミです。
ゼミで行った活動,研究成果をまとめたAbstract(抄録)が,国際学会10th World Conference on Qualitative Researchの査読を経て採択され,2月5日にオンラインで,“Analysis of Breastfeeding Scenes Depicted in Picture Books”というタイトルの発表を行いました。こちらがProceedings(学会講演集 ISBN: 978-65-80968-52-7)に収載されたAbstract(抄録)です。
英語圏の絵本における授乳場面は,主にポジティブなメッセージを伝えていると欧米の研究らが指摘してきましたが,アジア圏ではどうなのでしょうか?西洋とアジアでは流通する絵本も異なり,また伝えられるメッセージも異なる可能性があります。そこで私たちは,日本において流通している絵本の授乳場面がどのようなメッセージを伝えているのかを探索することにしました。
使用したのは,2004年6月から2005年3月にかけて,東京都内のA図書館において収集された絵本247冊の授乳場面の複写です(海外原作のものも含みます)。先行研究を参考に,2025年9月から11月にかけて,各授乳場面について,3名の学生がそれぞれ独立して,絵本から受けた印象および伝えられていると感じたメッセージを記述しました。その後,3名分の記述を統合して包括的な記述を作成し,さらにそれらを統合し,教員が内容分析を行いました。また,学生が幼い頃に各絵本を読んだ記憶があるか(授乳場面を見た記憶があるか)も記録しました。
初めに,授乳場面を含む絵本247冊のうち,219冊(88.7%)は約20年後の現在も同図書館に所蔵されていること,幼少期に日本に居住していた学生の誰一人,これらの絵本を読んだ記憶のあるものはいないということがわかりました。そもそも,A図書館を利用したことのある学生もいませんでしたが,247冊もある絵本ですので,同じ絵本が居住地域の図書館に所蔵され,手にした可能性は多少なりともあるだろう,と考えていました。ですが,結果は異なりました。読んだのに忘れてしまったのか,本当に全く読んだことがなかったのかはわかりませんが,いずれにしても,幼い頃に目にした授乳場面が成人後に何らかの影響を及ぼす可能性というのは,もしかしたらかなり限定的なのではないかと考えました。ただし,絵本の喫煙場面は子どもに影響を及ぼす可能性が指摘されていますし,授乳場面についても今回の結果だけで判断するのではなく,さらに情報収集が必要と思いました。
さて,授乳場面の印象についてですが,肯定的なものが60%(例:温かい,幸せ,かわいい,楽しい,優しい),否定的なものが25%(例:怖い,痛そう,つらい,疲れそう),中立的なものが15%(例:落ち着く,不思議,リアル)などでした。受け取ったメッセージは,主として〈母性愛〉〈家族の絆〉〈心理的な安定〉などでしたが,一方で,〈ジェンダー役割〉〈母親・女性への期待〉〈育児負担〉などもみられました。さらに,動物の授乳場面が多くみられたことも特徴的でした。これらの結果から,絵本における授乳場面は,社会規範を暗黙のうちに伝達する役割を果たしている可能性もあるのではないかと考えました。まだまだ分析,解釈は十分ではない段階ですので,今後,さらにゼミ内で議論を深めてゆきたいと考えています!