本年度から現代教養学科に着任いたしました髙橋かおりです。どうぞよろしくお願いいたします。専門は芸術社会学で、アーティストの方にお話を伺いながら、キャリアや生活について調査・研究を行っています。
さて、今回は私の担当授業「アート・マネージメント」について紹介します。この科目はアーティストの方を外部から招き、一緒に企画を考えながら、受講生が主体となって最終的な発表の場を作っていくという実習型科目です。
「アート・マネージメント」という語を聞きなれない方も多いかもしれませんが、もともとはアメリカやイギリスなどで生まれた言葉で、日本に輸入されたのは30年ほど前、1990年代です。当時の日本はバブル景気。芸術や文化に対してさまざまに資金援助が行われるなかで、どのように社会にアートの価値を伝えていくのか、社会と芸術をどうつないでいくのか、実践を含めて探求していく学問として、日本でも広がっていきました。
現代教養学科の「アート・マネージメント」の授業は20年近い歴史があり、現代教養学科の示す教養の広さを特徴づけてきた科目でもあります。これまで様々なアーティストの方々を招聘し、その時々の担当教員によって引き継がれながらも、毎年違った個性を発揮し、公演や展示、関連イベントを作り上げてきました。
現代教養学科では様々なプロジェクトや実習があり、授業を通して一つのプロジェクトを作るという点では、他科目との共通点も多くあります。ただ、「アート・マネージメント」の授業が他の授業とちょっと違うことを2つあげるならば、ひとつはアーティストの方と一緒に考えていくこと、もうひとつはアウトプットに実演や制作物などの作品が含まれることです。同じ社会に生きていても、表現される形式やとらえ方が独特であるアートの在り方をどう理解し、それを観客や関係者にいかにしてわかるように伝えるのか、そんなことに取り組んでいく科目です。
今年度の授業では、ヴァイオリニストの加藤綾子さんをお招きしております。加藤さんは近年、各地のプログラムに招聘されてパフォーマンスを行っており、演奏家や音楽、女性であることや日本人であることを問い直す作品を上演しています。【詳しくはこちら⇒https://ayako-kato.com/】
前期授業の前半では、日本における演奏家の歴史や、世田谷区の音楽イベントの状況を調べるなど、企画にあたっての基礎情報の整理と議論し、みなで基礎的な理解を深めていきました。後半では具体的にやりたいことや取り組んでみたいことを出したうえで、プログラム構成や演目を検討する文芸、会場プランや当日のスケジュールを計画する設営、宣伝や記録を行う広報の3つのチームに分かれて、企画実施のために議論を進めています。
前期は加藤さんに2度授業にお越しいただきました。自身の活動についてお話を伺うだけではなく、実際に演奏をしてもらったり、5月に上演されたレクチャー・パフォーマンス『アイム・ミート!』の特別版を披露してもらったりしています。(レクチャー・パフォーマンス:演劇・美術・音楽などの表現や実演のみならず、アーティストの語りや解説を組み合わせて構成・演出されるパフォーマンス形式)
目の前で演奏される楽器の音を聞いたり、パフォーマンスを見たりする中で、驚きやわからなさに直面しつつも、その意味不明さをどう理解するのか、どう外に伝えていくのか、みなであれこれ議論しながら取り組んでいます。また、「ヴァイオリニスト」という遠い存在が、目の前の少し年上のお姉さんとして存在し、その人が目の前で演奏が行うことで、受講生の中で音楽やアートという概念の手触りが変わってきているようにも感じます。決して心地よさだけではない、しかしハッとさせられる経験がそこにはあると、担当者としては考えています。
わからないことをわかりたい、わかったうえで誰かに伝えていこうというのは、学問の第一歩でもあると同時に、他者理解や協働の基礎にあるものです。今後は、このわからなさをどのように自分たちが伝えたいこととして企画に反映していくのか、私自身も楽しみにしています。
今回は担当教員の私がブログを執筆しましたが、今後は受講生のみなさんも書き手としてブログに登場予定です。本番は1月を予定しています。今後の展開にご期待ください。