鶴岡市は、日本で初めて2014年にユネスコ食文化創造都市の認定を受けました。今年は鶴岡市に藩主である酒井家が入部してちょうど400年になります。城下町の歴史と文化を継承し、日本海側に面していることから海の幸に恵まれ、出羽三山をいただき山の幸にも恵まれ、里を中心に在来作物も60種ほどあり、鶴岡市は「食文化」の市として内外から注目されています。
令和3年度文化庁の「食文化ストーリー」事業に採択され無形文化財の登録をめざす鶴岡市から「雛祭りの菓子」についての調査委託を受け、その報告書ができました。
江戸時代には日本海を運行する北前船によって立派な京都の雛人形が舶載され、さらに最上川を上って内陸部まで雛人形が運ばれ、現在に至るまで日本有数の雛祭り文化が継承されているのが山形県です。鶴岡市では、雛人形のみならず、野菜やキノコ、鯛や魚の切り身などモノの形を模す菓子が雛祭りの菓子として継承されてきました。
現地調査を行うと、20代の頃から私の研究対象であった450年位前にポルトガルから日本に伝来した砂糖菓子のアルフェニン(alfenim)が、有(ある)平(へい)糖(とう)と日本では呼ばれるようになったのですが、雛祭りのメイン菓子として30年位までは多くの菓子店で作られていたことが分かりました。現在は1店舗のみでしか作られていません。本家のポルトガルでも、2016年に現地で確認したところでは、1~2人しか作る人がいなくなっていました。
ポルトガルと鶴岡、それぞれの場所で伝承されてきた菓子製造技術が途絶えないように願うばかりです。
今年度も継続調査が決まりました。私に何ができるだろうかと考えています。
(客員研究員 荒尾美代)