2023年6月3日、第2回シンポジウム「近代以降の周辺諸国の対中国観」を開催しました。本研究所では昨年より「中国をめぐる国際関係と対中国観の変遷」という研究プロジェクトに着手しています。第2回のシンポジウムは、基調講演者として日本近代史の千葉功先生(学習院大学教授)にご登壇いただきました。今回は、日清・日露戦争期を生きたさまざまな世代の人物による言説を通じて、日清戦争前後の日本の対中国観に焦点を当てた内容で、ご講演いただきました。戦前は清を脅威に感じつつも、戦争中の勝利を通じて不安や恐れが薄れ、戦後には優越感すら抱く様子等を、当時の言説のみならず錦絵なども通じて丹念に解説いただきました。
基調講演を受けて、島根県立大学の石田徹先生が日朝清関係の視座から、東洋文庫の牧野元紀先生がベトナム近代史の視座からコメントされました。各々の地域における対中国関係の変遷を概説した上で、千葉先生との間で事実関係の確認や国際関係上の問題、地域の状況等に関して質疑応答が展開されました。参加者を交えたディスカッションでは、周辺諸国諸地域からみた近代「中国」の形成について、千葉先生と識者との間で活発な議論がかわされました。
当日は学生の参加も多く、中国という国を近代の対外関係史から理解しようとする本プロジェクトのテーマが、若い世代にとっても大きな関心事であることが確認されました。今後のさらなる展開を期待したいと思います。(湯上 良)