2025年6月28日(土)、国際文化研究所主催、ベトナム国家大学ハノイ校人文社会科学大学東洋学部日本研究学科共催による、公開シンポジウム「ベトナム国内事情からみる海外出稼ぎ就業行動と法制度」が開催されました。日本において、ベトナム人労働者は、外国人労働者の中では最多を占めており、技能実習生や特定技能の資格で働くベトナム人が日本社会で働き、生活する際にどのような困難に直面しているのかは度々報道されています。一方で、そうした労働者を送り出しているベトナム側の事情について知る機会が限られています。ベトナム側から海外労働者送り出しの法制度、海外就業行動を把握することを目指して、今回の公開シンポジウムを開催しました。
基調講演1の伏原宏太氏(越日希望の轍プロジェクト)は、「ベトナムの労働輸出に関する法制度と課題」をテーマにお話しくださいました。2022年に成立したベトナムの「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律」について、送り出し機関に対する規制がある一方でそこに労働者を紹介する仲介業者に関する規制が不足していること等、構造的な課題を分析された後、労働者が派遣にかかる費用を負担しない形が本来の姿であること等、今後の展望を示してくださいました。
基調講演2の新美達也氏(名古屋学院大学)は、「ベトナムの若者労働者の就業行動とその背景:現地生計費調査から」のタイトルで講演されました。出稼ぎの準備や出稼ぎ先での費用便益とリスク、ベトナム国内の雇用環境の変化を手掛かりに、日本への出稼ぎが「割に合わない」のではないかとの疑問を検証されました。出稼ぎ先での生活・労働環境の改善に取り組むことがベトナム人労働者にとってはリスクの低減になり、日本への出稼ぎにつながる可能性があるのではないかとの、今後への示唆もありました。
コメンテーターの奥貫妃文氏(昭和女子大学)は、ご自身が外国人労働者の労働組合に関わった経験、小澤薫氏(新潟県立大学)は、新潟での外国人生活者が抱える困難について調査された経験、Nguyen Thi Thanh Thao氏(ベトナム国家大学ハノイ校人文社会科学大学・院生)は、ご自身が技能実習生の教育機関で教育に関わった経験にも基づきコメントをしてくださり、講演者との間で活発な議論が交わされました。