若桑みどり著
『皇后の肖像―昭憲皇太后の表象と女性の国民化』
筑摩書房 2001.12 女21/Wak 4F開架室
今はテレビ・新聞などのマスコミが天皇一家の報道をすることによって、家族のあり方を伝えている。
テレビなどがなかった時代も、天皇家は国民に対してより強力なメッセージを発していた。それは肖像画や写真(戦前は御真影といわれた)である。本書では、明治天皇・皇后の写真を詳細に分析しながら、日本の近代化の中での女性の役割の進化を追っている。
本書はイコノロジー(図像解釈学)の手法を用いて、天皇ファミリーの肖像画や写真の絵解きをして行く。研究書であるが推理小説を読むような面白さがある。洋装をしながら、儒教道徳を体現した明治天皇の皇后は、良妻賢母の
手本として大きな影響力をもっていた。明治という時代の女性像を知るに
よい一書である。 (C.S)