書 名 :古都
著 者 :川端康成
出 版 社:新潮社
請求記号:080/Shi/か1-16(3階開架室 新潮文庫刊)
タイトルの『古都』は京都のことです。
『古都』は朝日新聞の連載小説として昭和36年10月~1月に渡って発表されました。
作者の最初の構想では恋愛小説になる予定だったそうで、「新聞百回だから、小さく愛すべき恋物語を書くつもりだった」と連載を終えた後に朝日新聞上で語っています。(朝日新聞1962年1月31日朝刊)
そう語る通り、最初のほうは主人公千重子とその幼馴染真一との恋愛物語を予感させるような雰囲気になっているのですが、ふたごの片割れである苗子が登場して以降、恋愛らしい雰囲気は薄れていき、千重子と苗子の関係性に重点が置かれていきます。
なぜその様な流れになったのだろうか、と考えていくのも面白いですが、わたしは『古都』に描かれる京都の四季折々の行事や今ではなかなか見ることが出来なくなってしまった、または見られなくなってしまった風物の描写に、とても魅かれました。
元々京都の町が好きだからかもしれませんが、川端は連載中に文化勲章を受章した際に、「この古い都のなかでも次第になくなっていくもの、それを書いておきたいのです。」と朝日新聞上の記事で語っています。(朝日新聞1961年10月19日朝刊)
そうした作者の意図を意識しながら読むと、一層古い都の風情が瑞々しく香り立つように感じられます。
読後は「そうだ、京都へ行こう…」というフレーズが脳内に響くことでしょう。
(Rio)