心の鏡を磨こう

<日文便り>

  大学1号館の西側入り口の2階から4階の階段の壁に鏡が掛けられています。
  その鏡面の右上に、「世の光となろう」「心の鏡を磨こう」「曇らすな心の鏡を美しく」という文字が金色に浮かびあがっています。東側の2,3階への階段には「世の光となろう」があります。
  この鏡は、昭和59年に大学1号館が竣工したときに掛けられたもので、かれこれ33年間、皆さんの姿を映しだしてきました。鏡の前に立って身なりを整えたり、姿勢を正したりしたことでしょう。

  

  鏡の最初は水鏡でした。ギリシャ神話のナルシスが水に映った美しい少年に恋い焦がれ、口づけしようとして水死し、水仙の花になったという話はよく知られています。やがて鏡に映る姿が自分自身であることを知って自己認識の第一歩を踏み出すことになるわけですが、古来、鏡は神秘的なものとして祭祀の道具として使われてきました。
  また鏡の向こうにもうひとつの世界があると考えられ、鏡を通りぬけて異次元の世界に迷い込む話を描いたルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』や、内部がすべて鏡でできている巨大な球体に入った男が発狂してしまうという江戸川乱歩の怪奇小説『鏡地獄』など、鏡は文学の世界の小道具として多く用いられています。

  さて、「心の鏡」とは何でしょう。それは、「鏡のように物事を映しだす心」という意味でしょう。地獄の閻魔大王は鏡に人間の罪状を暴き出すそうですが、鏡は物事の真の姿を映し出すものともいわれます。その鏡が曇っていては映し出されたものは曖昧で、時には歪んでしまいます。それではものごとを適確に判断することができません。まさに「曇らすな」なのです。
  ところで、昨今、解散をめぐって騒がれていたSMAPの3枚目のシングルは「心の鏡」でした。一般公募した歌詞で、中学2年生の少女の詞が採用されたそうで、その一節はこう歌われています。

    自由望むなら自分をみがこう。
    心の鏡ぴっかぴかにいつまでも光らせて
    人目を気にして生きるなんてつまらない
    心の鏡ぴっかぴかにいつも耀いていて
    ため息でハート曇らせないよう。
                    *
    心の鏡ぴっかぴかにいつも耀いていて
    微笑みでハートきらめかせるのだ

  では、あたらめて大学1号館の鏡の前に立って自分自身をとっくりと眺めてみましょう。
  あなたの心は耀いていますか。
  ちなみに、この文字は私が書いたものです。

(槍田良枝・雅号朝雨)