<受験生の方へ>
寒暖の差が激しいこのごろですが、受験生の皆さんは、寒さに負けず気力充実した日々を過ごされていることと思います。冬が来ると私は高村光太郎の詩が口をついて出てきます。
冬が来た
きつぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹の木も箒になった
きりきりともみ込むような冬が来た
人にいやがられる冬
草木に背かれ、虫類に逃げられる冬が来た
冬よ
僕に来い、僕に来い、
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ
しみ透れ、つきぬけと
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のやうな冬が来た
光太郎には冬の詩がたくさんあって「冬の詩人」と呼ばれています。この詩は、人に嫌がられ、草木に背かれ、虫類にも逃げられる、刃物のような厳しい冬こそ大歓迎だと歌っています。つまり、この「冬」は季節であると同時に、人生における厳しい試練という意味でしょう。その試練をしっかりと受け止めて、その厳しさに負けずに立ち向かっていこうとする力強い詩です。
今、受験シーズン真っ盛り。皆さんの姿が目に浮かびます。今まで一心不乱に勉強してきた成果を挙げる時がきました。厳しさに負けず、まっすぐに胸を張って立ち向かってください。皆さんの力が充分に発揮されることをお祈りしています。
ところで、「創作(俳句)」という私の授業では17名の受講生で句会を開いています。昨年11月には、日本語日本文学科客員教授の黛まどか先生を外部講師としてお迎えして句会を開きました。俳句を初めて作る人ばかりですが、皆さんめきめきと上達しています。いくつかをご披露します。受験勉強につかれた頭の息抜きにどうぞ。
コンビニのおでんが沁みる二十四時 理沙
白き息吐きつつ君を待つ朝(あした) 莉奈
自転車を漕ぎオリオンを仰ぎ見る 緋莉
柚子湯してひたと平和を祈りけり 愛子
陽だまりにほころぶ頬と梅の花 柚衣
雪女嘆きて降らすべた雪よ 優子
風邪引きの父の背中が小さくて 佳奈子
最後に受験生への応援句を三つ。ガンバロウ!
「必勝」と大書受験の日が迫り 辰巳比呂史
名前まづ書けよと受験の子を送る 清水 公治
受験書のひと日に古りて合格す 市村究一郎
(UT)