冬の花

<日文便り>

「花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは」(「徒然草」137段)
ではないが、花の盛りの温暖な季節よりも、寒い冬に咲く花が、私は好きだ。
今のキャンパスには、椿の花が至るところに咲いている。
最も大輪なのは、1号館前の赤い椿。
朝、出勤して、まず挨拶をする。

 

すぐ横には、白い椿もある。
「紅白」が揃っていて、めでたい限りだ。

 

3号館の前のものは、ほのかな薄桃色である。
こちらは、小ぶりだが、花が一番きれい。

 

花の数の多いのは、グリーンホールの横(記念講堂側)。
三本ほどの木が並んでいて、たくさんの花で緑を彩っている。

が、いずれも花弁のところどころに茶色の染みのあるのが、惜しまれる。
毎日手入れをされている庭師の方には大変失礼だけれども、椿の花の根元を
見ると、土が硬くて、十分な栄養を摂ることができていないようだ。
毎年、愉しみに見ているのだが、土の入れ替えや補充がされているとは言いがたい気がする。
しかし、手入れの行き届いた美麗な花でなくとも、前に立って眺めているだけで、
すっかり心が洗われる。
それが花の尊さというものだろう。

花に譬えれば、皆さんは、社会に出て花を咲かせる、その前の「つぼみ」であろうか。

野の花と違って、皆さんは、自分の力で足元の土を耕し、いくらでも地味を
豊かにして、大きな花を咲かせることができる。
「耕す」とは、毎日の授業の一時間、一時間を、大切に、そして誠実に
取り組むこと以外にはありえない。
就職に有利だから、とか、実生活にすぐ役立つから、とかに関係なく、
授業そのものに集中して、ひたむきに頭と身体を働かせてほしい。
花を咲かせ、実を結ぶのは、ずっとあとで良い。

これが、すでに老い木となりつつある私の願いである。

(吉田昌志)