<日文便り>
春は新しい発見や、出会いの季節です。
―それにしても驚きました。
皆さんは、「自分のルーツを探る」時、何世代前、何時代まで遡りますか。
日文の卒業生、長尾衣里子さんには驚かされました。
何と〈ほ乳類の祖先〉まで遡ってしまったのですから。
長尾衣里子
『ルーツを追って 恐竜時代前に天下をとったほ乳類の祖先たち』
(2017年3月22日、誠文堂新光社 1,000円+税)
それもそのはず、長尾さんは日文を卒業したあと、サイエンスライターとして活躍なさっているのです。この本の前にも『三つの天窓 アリ・恐竜・ホモサピエンスが見上げた宇宙』(2012年5月16日、誠文堂新光社)を出版なさっています。
さて、『ルーツを追って』「まえがき」にいわく、
古生物学者(パレオントロジスト)には、タイムマシン開発なんて必要ないようだ。なぜなら彼らは、頭の中につちかった自前のタイムマシンで、自由に時間をさかのぼることができるからだ。
このしゃれたフレーズを起点として、時間旅行が始まります。
ところは、南アフリカ共和国の大カルー盆地(グレート・カルー)―南アフリカの半分を占める半砂漠地帯(「日本国土の1.5倍というスケール」だとか!)。ここは、「盤竜類よりほ乳類に近づいた獣弓類(じゅうきゅうるい “獣の特徴をもつもの”の意味)と呼ばれるご先祖様たちの化石の宝庫」(表紙扉より)なのだそうです。
めざす時代は、ペルム紀後期~三畳紀前期。まだ、恐竜もほ乳類も誕生していなかった頃のわれらがご先祖様たちが一世風靡(いっせいふうび)していた世界がくり広げられる。(まえがき)
本には、2億5500万年前、2億5200万年前、1億3000万年前などといった「時」が、ぽんぽん飛び出してきます。
この本は、長尾さんが南アフリカ博物館のロジャー・スミス博士たちとともに実施した、約1週間にわたる発掘調査をもとに書かれたものです。
写真が多用されていて、見応えがあります。楽しい。
何よりさすが日文出身!文章が生きています。ぴちぴちと勢いづいて躍ったり、じっくりと、難しいことをわかりやすく解きほぐしてくれたり……。
この本に乗って、私は一気に「時」を駆け抜け、〈ほ乳類の祖先〉たちに出会ってきました。
―いい旅でした。
長尾さん、今後もますます活躍し、たくさんの人を次なる旅に誘って下さい。
春です。皆さんも旅に出かけませんか。
長尾さんと旅するなら、『ルーツを追って』はAmazonなどでも手に入るそうですよ。
(FE)