〈日文便り〉
5月に入り、爽やかな薫風に恵まれる季節になりました。
今年はいつもより長い連休も終わり、学生たちは元気にキャンパスに戻ってきました。
今日は「日本語教育入門」という授業について少し紹介します。
この授業は日本語教育を専攻する学生がその入門として受講するとともに、
他の専攻を持つ学生たちが一般教養科目として受講します。
日本語教育を専攻する学生でさえ、卒業後必ずしも日本語教員になるわけではなく、
ましてや他専攻の学生たちにとって日本語教育は自分の将来に直接的には結びつきません。
そこで、この授業では、日本語教育の実際的なノウハウというよりも、
たとえば次のようなことを学生たちが考えるきっかけになればよいと考えています。
一つは、日本語を外国語として学ぶ学習者が世界にはどのくらいいるのか、
どんなことを目標に、どんな方法で日本語を学んでいるのかについて、
その一端を知ることです。外国人材受入れ拡大政策を受けて、また外国人観光客の急増もあり、
普通に日本に生活していても外国人と接触することが多くなりました。
そうした中で、それを単なる街角でのすれ違いに終わらせるのではなく、
すれ違う縁のあった方たちがどんな苦労を乗り越え、またどんな楽しみを得て
日本語を学んでいるのかを知ることは、人とのつながりを
広げたり深めたりすることにつながるだろうと思います。
もう一つは、日本語を外国語として学ぶ方法を知ることで、
自分自身の外国語学習に活かしてほしいということです。
毎年最初の授業で学生たちに聞いてみるのですが、
英語などの外国語が上手になりたいとほぼ全員が思っています。
ただ、残念ながら、「英語がへたな日本人」という風評が定着してしまっているように、
その希望を達成するのはわずかな人に留まるようです。
いつも学生に言うのですが、外国語は一定の努力をすれば誰でも必ずできるようになります。
同時通訳ができるほどの高度な外国語能力はともかくとしても、
日常会話レベルの外国語がいくら努力してもできない人などいないはずなのです。
私自身も日本語教育ということを仕事にして、数多くの日本語学習者と接する中で、
自分の外国語学習に対する大きな刺激を受けてきました。
たとえば、まだ数カ月の日本語学習しかしていなくて習った語彙・文法も
わずかなのに果敢にコミュニケーションを図ろうとする意欲のある学習者、
目標を設けて連日の努力を続けて短期間に見違えるような上達を見せた学習者、
単語や文法を憶える辛さを楽しみに変えようとおもしろい練習方法を編み出す学習者等々。
こうした日本語学習の方法と実態を知ることが、
学生自身の外国語学習の意欲や方法論の開発につながることをいつも祈りながら授業をしています。
(YO)