〈日文便り〉
去る秋分の日、本学名誉教授の茅場先生が企画された「文学散歩」があり、
先生方と助手、卒業生が参加しました。
主なルートは次のとおり。
水天宮⇒谷崎潤一郎生誕の地⇒三越前⇒常盤橋・銭瓶橋跡・一石橋迷子しらせ石標・渋沢栄一像⇒日本橋⇒霊岸橋・鎧橋・湊橋⇒永代橋⇒深川不動⇒富岡八幡宮(その他にも盛りだくさん)
先生が作成してくださった地図をもとに、日本橋界隈の江戸・明治の跡を辿ります。
普段は東京に来ても、そびえたつ高層ビル群に圧倒されて、まさにコンクリートジャングル。
「都会だなあ」と思わずため息をついてしまいますが、文学散歩が終わった頃には
「東京って面白い!」に変わりました。
今回先生のお話を聞きながら歩いていると、至る所に江戸・明治の名残があるのです。
【説明をしてくださる茅場先生】
特に印象に残ったのは、一石橋迷子しらせ石標。
一石橋のたもとに立っているのですが、江戸時代には
この石の柱に迷子の情報を掲示していたそうです。
実はこのスポット、以前私は幾度となく前を通ったことがあります。
それでも気が付かずに、ずっと通り過ぎていました。
人混みや雑踏が苦手な私は、「東京」というだけでいかに自分の感覚をシャットダウンしていたのか
深く反省した次第です。
また、今回私のお気に入りだったのは、谷崎潤一郎生誕の地と、霊岸橋~永代橋の道のりです。
人形町には「春琴抄」「細雪」で有名な谷崎潤一郎の生家跡があり、記念碑が立っていました。
近代文学好きの私にはたまらない名所です。
この辺りは下町の風情が残っていて、情緒がありました。
大通りには立派なからくり時計がどっしり構えており、
運よくからくり人形が動くところを見ることもできました。
霊岸橋~永代橋の道のりは、喧騒から少し離れて人通りが少なくとても静か。
先生の説明をお聞きしていると、今は消えてしまった江戸の景色も、
なぜだか懐かしい気持ちで想像されます。
今回歩いた距離はなんと約10キロ。当日は風が強い日でしたが、
歩くと汗ばむ気温にはちょうど良かったのかもしれません。
今まで、東京はなんだか息苦しいと思っていましたが、
文学散歩中の青空の清々しさと、永代橋で隅田川を眺めながら
胸いっぱいに吸い込んだ心地よい空気が忘れられません。
この度は貴重な機会をいただきまして、本当にありがとうございました。
時代や思いが様々に交差したとても素敵な時間でした。
(MR)