<日文便り>
最近は手書きすることが減ってきています。
でも、私は手帳は手書きです。
あと、研究のために集めたデータは、手書きのほうが頭に入って整理しやすい。
日本語学では、事例(データ)を集める時に、コーパスというビッグデータを頼りにします。
私は、今年の夏に、奈良時代から現代までの書きことばの中から「高い」を取り出し、それが何を形容しているか、どういう語の述語になっているか、また、程度を表す形容詞の対義関係を調べました。今回は、奈良時代から現代までの文学作品などをテキスト化して、前後の文脈と合わせて検索できるコーパスを使いました(国立国語研究所を参照してください)。
調査結果はまたの機会にお知らせするとして、その過程で得られたデータの整理について書きます。
コーパスで集めた数多くのデータは、表計算のソフトに取り込んで使います。
しかし、その表のままだと、どうも、それぞれの語の意味が頭に入ってきません。
そこで、大量に集まったものを無作為抽出して事例を絞り、紙に書いて整理しました。
そう、手書きの「エクセル」です。
いつの時代か、なんという作品か、どういう語か、どういう意味分野に属するのか、などなどを、1語ごとに1枚の紙に書いて整理しました。
コーパスが公開される以前は、本を開いて順に読んで、ひとつひとつの事例を集めていました。
実は、この方法は、時間がかかるけれども、それぞれのデータが記憶に残ります。
あと、なんだか、事例のひとつひとつが大切な気がします。
でも、コーパスという便利なものが出てからは、この手法はあまり使わなくなりました。
受験生のみなさんも、日ごろはデジタルに接する機会が多いと思います。
でも、参考書や問題集にはペンや鉛筆で書き込みをしていることでしょう。
私は、手書きと記憶の関係の専門的なことはわかりませんが、記憶するためには、やはり手書きがいいような気がします。
さて、年が明けると、入試がスタートします。
今、参考書や問題集に書き込んだ大切なひとつひとつの文字が、成果につながることを祈っています。
(嶺田)