2020年11月20日 学長ブログ [2020年11月20日(Fri)]

<学部長インタビュー>
今回は、生活科学部長の高尾哲也教授に話を伺います。なお、生活科学部は2021年度から「食健康科学部」に名称が変わります。

■プロフィール
小原: まず、先生がどんな研究をされているのか伺いたいと思います。
高尾: 研究テーマは二つあります。一つ目は「唾液を出したい」がキーワードです。唾液を適度に出すために、まずは唾液を出せる食品成分や唾液を出す方法を探すための指標をつくろうとしています。現段階は、指標そのものを検証してより良い指標をつくる、もしくは評価法を探ることから始めています。現在、指標には細胞を利用しようとしています。
小原: そもそもなぜ「唾液を出したい」なのでしょうか?
高尾: 高齢者は唾液が少なくなりがちですが、唾液が少なくなると食べるのが苦痛になります。そうすると、低栄養になることもあります。また、唾液が少なくなると、虫歯や歯周病にもなりやすくなります。ですから唾液が出しやすくすることは、特に高齢者にとって生活の質(QOL:Quality of life)の向上につながります。
小原: なるほど、梅干しを食べるとか、そんな単純な話ではないのですね。
高尾: もう一つのテーマは、「炎症を抑える食品成分を探る」です。たとえば、腸の炎症を抑えられれば、下痢などを軽減することができます。炎症を抑える食品成分を見つけられば、これもQOLの向上につながるだろうと思います。近年、医学や薬学ばかりでなく、食品や栄養の分野でも、主に装置や試薬の価格の問題ですが、細胞の利用や細胞内の情報伝達、遺伝子発現の測定や解析ができるようになってきました。ゴールははっきりしていますが、その道のりはまだ長いです。
小原: 両方の研究は、ともにQOLの改善につながるのですね。

小原: 次に、先生の研究のなかでおもしろいと思う点はどんなところでしょうか。
高尾: まず、自分の研究で他の人が知らないような、初めてのことを知ることができるのはおもしろく楽しいです。たとえば、学生は自分の卒業研究で今までになかった初めてのデータを得ることになります。そのデータから得られる知見は小さな一歩ですが、卒業研究を進める上でのおもしろさにつながります。
小原: 研究は、今までに明らかにされていないオリジナルなことを追求するのでなければならないですが、確かに誰も知らなかったことを明らかにするのはワクワクしますね。
小原: 次に、先生が食品加工学でこの様な研究の分野を選んだきっかけを教えてください。
高尾: 私は食品会社で食品の研究開発をしていましたが、私の教授から昭和女子大学を紹介されて本学の教員になりました。ちょうどその2000年ごろ、味覚を分子生物学的に追及する研究の成果が上がり始めたのです。私は食品の大きな機能の一つに「味」があると思っています。そして当時はこの分野の研究者は少なく、世界に100人もいませんでした。ということは、この分野では私は世界で100位以内の研究者になれるかもしれない・・・そうだったらやろう!と思って、この分野を研究テーマとしました。その後、あっという間にこの分野の研究者は増えてしまいましたが(笑)。
小原: 私の高校生の頃は生物学と化学の境界領域の「生化学」という学問分野が始まったばかりの時代でしたので、私もこれに憧れて化学科に進学しました。少し似ていますね。
小原: ところで、先生の趣味や座右の銘にしている言葉があれば教えてください。
高尾: 趣味はぶらぶら歩きです。途中で写真を撮ることもあります。ちょっとした風景や身近なものを撮るのが好きで、おもしろいマンホールとかを見つけたら撮ったりします。座右の銘は「楽」です。「楽しい」とか「らく」なのは好きです。ですが、「らくをする」のはなかなか大変です。「らく」をしたいけれども、「らく」に至るには苦労します。「らく」は探さないと「らく」になれないわけです。
小原: なるほど、確かに。簡単には「らく」になれないということですか・・・肝に銘じます。

■学部について
小原: 先生の学部は来年度から名称を変更して食健康科学部になりますが、この学部の特徴・強みを教えてください。
高尾: 当学部では、食品の川上から川下まで、つまり食品の製造、供給、流通、食事の設計などまで総合的に扱っているところが、他にはない特長です。食安全マネジメント学科が開設されて、それまで欠けていた流通マネジメント分野も学べることになり、食をトータルに捉え、学部全体でFood Systemを考え、理解することができるようになったと思います。また、食安全マネジメント学科では2022年度から卒業に必要な専門の単位数を現在の76から90程度に増やして科目を充実させる予定であり、健康デザイン学科でも特色を生かしたカリキュラムで教員が学生の能力をより伸ばせるようになります。今後も各学科の強みをもっと強化していく計画です。
小原: 学部ではどのような人材を育成したいですか。
高尾: 学生にはどんな分野に進んでも、大学で得た知識や技術を使って様々な場で応用・展開できる力を身につけてほしいと思います。そのために、在学中は自分の分野と違う分野も学んでほしいと思います。大学時代は、受動的であっても情報が降ってくる、最後の期間です。この期間を活用してほしいと思います。大学2年生の前期までは、学んだことを信じなさいと言いますが、それ以降は安易に信じるばかりでなく、むしろ情報や学んだことを疑え、信じないでと言いたいです。
小原: 知識・理論を一方的に理解するだけでなく、疑ったり批判的な捉え方をしてみると新しい事が見えてくるかもしれませんね。

■大学について
小原: 昭和女子大学で学ぶメリットはどんなところにあると考えますか。
高尾: 本学は、100年前に創立した女子大学ですが、創立当初から良妻賢母を掲げていないところが良いなと思います。また、学生と教員の距離が近すぎず、遠すぎずで、教員は学生の話をきちんと聞けるところが良いと思っています。そして、教員は学生のことをよく考える親切な大学だと思います。最後に、学生へのメッセージとして言いたいことがあります。大学や研究室では皆が互いに近しいですが、外の社会では違います。社会に出ると、概ねどこも自分の思っているような環境ではなく、変だなと感じることがあるのが普通です。また、そういうことに驚いてもよいけれど、怖気づかないで力強く進んでほしいです。 

小原の感想:
高尾先生は、生活科学部の健康デザイン学科および食安全マネジメント学科の両方の開設に関わってこられたので、その分、この学部で学ぶ学生たちへの思いや期待する気持ちには熱いものがありました。生活科学部でしっかり、そしてのびのびと学んでいる学生の卒業後の活躍に期待したいと思います。

今回で学部長インタビューは終わります。次回からは、学内イベントや学生プロジェクトなど、様々なトピックスの中から1つを取り上げて紹介していきます。初回は、昭和女子大学創立100周年記念となるオリジナル和菓子の製作に挑戦した「和菓子100th Anniversary Sweets」プロジェクトを紹介します。ご期待ください。

<関連リンク>
高尾哲也教授の教員紹介ページ
学科紹介ページ(健康デザイン学科)
学科紹介ページ(管理栄養学科)
学科紹介ページ(食安全マネジメント学科)