2020年6月12日 学長ブログ [2020年06月12日(Fri)]

<学部長インタビュー>
国際学部長の高野恵美子先生にお聞きしました。

■プロフィール
小原: まずは高野先生のプロフィールをご紹介したいと思います。先生の専門分野と研究について教えていただけますか。
高野: 専攻は言語学で、そのなかでも認知言語学に関心を持って研究しています。人は物事をどのように捉えるかで、表現の仕方が変わります。これは、同じ言語の中でも言えることですが、言語が異なると物事の捉え方も異なるので、同じことでも異なる表現で伝えることがあります。つまり、文化・言語・思考が相互に関連し合っているということができます。先日、「Cool Japan」というTV番組で、長年日本に住んでいる外国人が日本には「無言の圧力」があると指摘していました。会議中にメモを取らない後輩に、「メモをとりなさい」と言うのではなく、黙ってノートを差し出すことが、無言の圧力だと感じたようです。日本には「察し」の文化があり、直接的な表現を避けたり、相手の言いたいことを忖度したりします。それに対して英語の話し手は、言いたいことをズバッと言います。また、道に迷った時、日本語では「ここはどこ?」と言うのに対し、英語ではWhere am I?と言います。日本語は話し手自身が事態の中に臨場し、自分からの「見え」を言葉にしているため、「私」は言語化されません。一方英語では、自分を事態の外に置き、道に迷った自分を客観的に表現するので、Iが言語化されます。このように、日本語母語話者と英語母語話者の事態把握の違いが言語化にどのような影響を及ぼしているのか、日英語のデータを用いて分析・研究しています。
小原: なるほど言われてみると確かにそうですね。全く知らなかった世界です。先生の研究でおもしろいと思う点やわくわくすることを教えてください。
高野: 「古池や蛙飛び込む水の音」という松尾芭蕉の俳句がありますが、この俳句には100通り以上の英訳があります。「古い」(old, ancient)や「池」(pond, lake)等の単語の違いもありますが、なかでも面白いのは、蛙がa frogではなく複数のfrogsになっているものがあることです。日本語なら、静寂の中一匹の蛙がポチャッと池に飛び込む様子が想像されます。英語のfrogsの場合、一度に何匹もの蛙が池に飛び込むのではなく、一匹飛び込んで水面がさざめき、しばらくして、次の一匹が飛び込むという解釈ができます。ものの数え方でも、英語では蛙をa frog/ frogsと単数と複数をはっきり区別しますが、日本語でははっきり言わないですね。このような英語と日本語の違いが不思議でおもしろいと思い、日英対照という視点で研究を続けています。英語を学ぶことによって日本語の特徴に気がつくことが多く、驚きます。
小原: 英語に興味を持ち、学ぼうと思ったのはどういうきっかけですか?
高野: 高校1年の時に教わった英語の先生の影響が大きいです。その先生は、通訳もされていて、そのお話をよくしてくださいました。それまでも英語は好きな科目ではありましたが、先生への憧れが、より英語に興味をもつきっかけとなりました。大学卒業後、中学・高校の英語の教員として務めた後、イギリスのノッティンガム大学の大学院に留学しました。そこで指導していただいた先生から、研究者として、そして教育者として多くのことを学びました。当時は教職を離れることも考えていたのですが、教師のあるべき姿や教えることのすばらしさを教えていただき、再び教壇に戻ることになりました。今でもイギリスに行った時はその先生を訪ねていきます。
小原: 先生の趣味は何ですか。
高野: 今は、片付けにはまっています。色々片付けると気持ちがすっきりします。
小原: 好きな言葉や座右の銘はありますか?
高野: 研究室の壁に貼って時々思い出すようにしている言葉があります。When life gives you lemons, make lemonade!(人生がレモンというすっぱい果物をくれるなら、それでレモネードをつくればいい)です。物事がうまくいかない時に自分を励ます言葉です。

■学部について
小原: 国際学部のセールスポイントはどのようなところでしょう。
高野: まずは全員が留学するという点です。今年度後期から、テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)とのダブルディグリープログラム(DD)第1期生が、いよいよTUJでの学修を開始します。TUJに加え、国際学科では上海交通大学、ソウル女子大学とのDDプログラムが既に実施され、韓国の淑明女子大学とのDDプログラムも今後始まる予定です。これらのDDプログラムはレベルが高く厳しいので、学生たちは切磋琢磨しながら励み、真の実力をつけています。英コミでは 、TUJとのDDプログラムに加え、ボストン校への留学後、さらに世界中にある協定校への認定留学を奨励しています。協定校であるレズリー大学に留学し、さらに上海の華東師範大学で学んだ学生もいます。大学生という若い時期に留学すると、語学力やコミュニケーション力の習得に加え、異文化を直接体験することで、「人間力」が育成されます。留学後の学生たちは、相手を思いやり、自然に助け合う行動がとれるようになります。このように、学生たちが成長する姿を見るのは、教員としての大きな喜びです。
小原: 国際学部はこれからどのようにしていきたいですか。また、どのような人材を輩出したいと考えていますか。
高野: 国際学部は今年度完成年度を迎え、来年度からは新カリキュラムが施行されます。国際学科は国際関係の分野を、英語コミュニケーション学科はコミュニケ―ションの理論と実践を強化していきます。これらの専門性を中心とした独自の教育プログラムを通して「論理的に考え、調べ、発信し、他者を説得する」力を身につけて、社会に羽ばたいてほしいと思います。卒業後は、在学中に磨いた人間力を存分に発揮して、社会やコミュニティの中で活躍する人材となってほしいと願っています。

■大学について
小原: 昭和女子大学で学ぶメリットはどこにあると考えますか。
高野: 今はオンラインで世界中の人々と簡単に繋がることができますが、キャンパス内にTUJがあるメリットは大きいと思います。外国に留学しなくてもアメリカの大学の授業、そして文化を実体験できることは、他大学では経験できないことです。英語を専門としない学部の学生も参加できる交流の機会もたくさんあるので、ぜひ積極的に参加してほしいと思います。
小原: 今日はインタビューにお答えいただいて有難うございました。

小原の感想
今回のインタビューでは「認知言語学」について少しだけお聞きしましたが、言語と、物事の捉え方や文化とは互いに深い関係性があることに気づかされ、興味深かったです。学問の世界は実に多様で広いことを改めて実感しました。また、高野先生が教育者の道を歩むきっかけとなったイギリスの教授の話から、教育者が学生に及ぼす影響は大きく、だからこそやりがいのある職業であることを再認識しました。教育に関わる者として心に留めておきたいと思います。

次回は、グローバルビジネス学部長の武川恵子先生をブログで紹介する予定です。ご期待ください。

<関連リンク>
高野恵美子教授の教員紹介ページ
学科紹介ページ(国際学科)
学科紹介ページ(英語コミュニケーション学科)