<教職員インタビュー>
今回は、環境デザイン学科の田村圭介教授の研究室で話を伺いました。田村先生は新宿駅や渋谷駅の構造を研究されており、最近テレビにもご出演されていらっしゃいました。
■研究分野、内容について
小原:先生の研究分野とテーマを教えてください。
田村:専門分野は建築学の意匠・計画です。意匠とは建築物のデザインを意味し、計画は建築物の機能性を意味しています。現在は駅の空間構造を明らかにすることをテーマとして研究活動をしています。
小原:先生がこの道に進まれたきっかけはどのようなことだったでしょうか。
田村:祖父が医師だったので、小さい頃はなんとなく外科医に憧れていたのですが、絵を描いたり模型を作るのが上手だったため、その祖父から建築をやったほうがよいと言われました。一方で、父の仕事のため10~15歳はフランスで育ち、両親が旅行好きだったこともあり、旅先で色々なアートや建築を見てきました。その影響で、その後も建築を見るのが好きになり、建築学に興味を覚えたのがきっかけです。昭和女子大学に入校する前は、本社がロンドンにある東京の建築設計事務所に勤め、横浜港大さん橋国際客船ターミナルの設計・監理を担当しました。その後、自分で設計事務所を開き、設計の仕事と大学教員の両方を頑張っていたのですが、5・6年前に過労で入院したこともあり、設計活動をせず今は教員に専念しています。昭和女子大学に入校したきっかけは、早稲田大学での恩師の古谷誠章先生の勧めで本学の建築の教員となりました。
■研究の醍醐味
小原:先生の研究において、興味深い点や面白い点はどのようなことでしょうか。
田村:大学では、建築学を専門に、きれいなわかりやすい空間の造り方を学びました。一方で駅は大学生の頃から不思議な空間だなと思っていて、建築家が全て完成させるのではなく、古いものを利用しながら、今のニーズに合わせて造り足して生まれ変わり、現在まで生きのびています。初めに完成してしまうのでなく、現在進行形で進化していて完成形がわからない点で面白いと思います。また、このテーマならプロジェクト活動として学生の学びの場にもなる点もよいと考えています。
小原:確かに、駅は時代とともにどんどん進化して変わっていきますね。
■趣味、好きな言葉
小原:ところで先生の趣味は何ですか。
田村:やはり建築やアートを見てまわるのが好きですね。見る時は作品からインスピレーションを得ることを意識しています。
小原:先生が日ごろモットーとしていることや好きな言葉があったら教えてください。
田村:私は自然体でありたいと思っています。無理しない、偽らないということです。偽るとそのうちばれて、もっと格好悪いことになります。
■学生へのメッセージ
小原:昭和女子大学で学ぶ上でのメリットと、学生に向けてのメッセージをお願いします。
田村:昭和女子大学は、環境的に恵まれていると思います。構内は大き過ぎずほどほどのスケールで、大学からはどこにでも行きやすく、機動性もよい、また、教員と学生との距離・関係性もよいと思います。
学生には自分のやりたいことに対して自由になってほしいと言いたいです。特に建築を学んでいる学生には、そつなくこなすことよりも、固定概念にとらわれずにもっと自由にやったほうがいいと言いたいです。
小原:学生には、なんとなくあると思っている決まりなどに囚われずに、自分のやりたいと思うことを思い切ってやってほしいということですね。今日は有難うございました。
小原の感想:
田村先生が駅の構造に興味をもつのは、初めから完成したものより社会の状況、ニーズに合わせてどんどん形が進化していくものに魅かれるからであると伺いました。これはおそらく、建築以外でも物事に対して先生が持たれている価値観の一つかなと思いました。
人の場合も同様で、初めから優れていることは大変すばらしいのですが、初めから完成形というよりも学びや経験によってどんどん進化し成長していく学生の姿を見るのも、またそれを後押しできるのも教育の醍醐味だと思っています。