■「こどもホスピスの奇跡-短い人生の「最後」をつくる」(石井光太著、新潮社)を読んで
先日、「こどもホスピスの奇跡-短い人生の「最後」をつくる」(石井光太著、新潮社)という本を読みました。この本を本学の図書館の推薦書に選びたいと思っていますので、興味をもった人は来年度から図書館で読むことができると思います。ホスピスといえば、不治の病にかかった人が残りの人生を治療ではなく、痛み苦しみを緩和しつつ、その人らしく人生を終えることのできる施設、と認識されていると思います。しかし、実は、ホスピスが日本よりかなり進んでいるイギリスでは、必ずしも死を看取る場所ではなく、家族を介護から一時的に離してリフレッシュさせる目的としてつくられた有名な施設もあるそうです。日本でつくられたこどもホスピスも、難病の子どもとその家族のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指して活動されています。この本では、こどもホスピスをつくる活動を起こした人々と、ホスピスの開設活動のきっかけとなった子どもたち、またホスピスを利用した子どもたちとその家族について述べられています。医師だけでなく、難病で亡くなった子どもの親や保育士、看護師、医療事務のスタッフなどもこのホスピスの開設に関わっています。彼らは、難病で不治の子どもが延命措置によって生かされ苦しみながら死を迎えるより、残された短い時間を充実した幸福な時間として送れるようにサポートできる場所が必要と考え、その目的に向かって行動を起こしました。これらの人々の高い使命感と思いに共感し、これこそが仕事に対してあるべき姿勢であり、持つべき価値観だと感動しました。また、難病を患った子どもたち一人ひとりがどのように感じ、考えたのかが述べられていますが、純真な子どもたちの言葉や行動、親の思いなどは、涙なしでは読み進めませんでした。このホスピスの開設に関わった人々の志の高さから、仕事する者にとって何が大切かを改めて考えさせられる一冊でした。