<教職員インタビュー>
今回は食安全マネジメント学科の地家真紀専任講師にお話を伺いました。
地家先生は、大学では医療衛生学部の衛生技術学科(産業衛生学専攻)で、そして大学院では労働衛生学を学び、現在もこの分野で研究されています。本学では新進気鋭の専任講師として活躍されています。
■研究の分野・テーマについて
小原: 先生が学ばれた公衆衛生学や産業衛生学は、高校生にとっては比較的なじみが少ない分野かと思いますが、先生がこの分野に興味を持たれたきっかけは何だったのでしょうか。
地家: 元々、環境やメンタルヘルスなどに興味があったのですが、普通の人が働くために健康面で必要な知識を持ち、働く中で病気や事故で困っている時にその傷病に詳しい専門家との懸け橋となること、働く人の健康を守ることに興味を惹かれました。
■研究の醍醐味について
小原: 先生は睡眠について研究されていると聞いていますが、研究で興味深い、面白いと感じる点はどんなところでしょうか。
地家: 睡眠時間は国、文化、男女、年齢や様々なものに影響を受け、異なっています。現代の平均的な睡眠時間は7、8時間ですが、それよりかなり長いあるいは短い睡眠を続けると生活習慣病のリスクが上がります。睡眠は精神的なことにも影響を受けます。たとえば心配事があり眠れなかった翌日は眠くなる一方、嬉しくてワクワクして眠れなかった場合はそれほど眠くならないというデータがあります。また、保育園児は遅寝早起きですが,幼稚園児は早寝遅起きで、母親の社会生活の状況に影響を受ける傾向があります。睡眠時間は色々な事に影響を及ぼすと同時に影響を受けており、そういうところが興味深いです。
小原: 先生の今の研究テーマについて教えてください。
地家: アルコール度の高い酒を多量に飲酒する女性の睡眠と生活習慣(病)との関係を調査しています。また、日本全国10万人の中高年の健康調査から、酒、たばこの摂取状況と睡眠や健康との関連を調べています。
公衆衛生はみんなが健康になれるための学問です。様々な生活習慣と健康の関係を明らかにするのが目的ですが、その範囲の中でテーマは何でも選べるところが良いです。調査から、回答者の外観や第一印象とは異なった現実の生活習慣が見えてくるところも興味深いです。そして、何となく経験や推測から立てた仮説が、調査データの統計処理によって根拠を持つ事実として明らかになるところが楽しいです。一定の実験条件に揃えた動物実験で出す結果とは異なり、多様な因子をもつ多くの人々のアンケート調査からのデータを多変量解析して、生活習慣病の因子を探ります。アンケート調査はその都度人々の状態が変わるため、同じ質問を繰り返して聞いても同じ結果にはならないので、ある条件下での結論であることを前提に述べられます。そして得られた結果を、さらにその後の調査に発展させていくことができます。
小原: なるほど、生活習慣病などには多様な因子が影響するので、一定の実験条件や変動する因子を極力制限した実験から得たデータよりかなり複雑であり、それだけに面白味もあるのですね。
■趣味、座右の銘について
小原: ところで,先生の趣味や大事にしている言葉があれば教えてください.
地家: 今はコロナ禍で難しいですが、旅行や工場見学が好きです。知らない世界を見ることができるからです。それと植物を育てることやフラワーアレンジメントも好きです。
大事にしている言葉では、母がよく言っていた「十日に九里半」という言葉です。私はこの言葉を「継続を意識して毎日続けること、そして忙しくても時には振り返り考えながら継続する」ことと解釈し、大事にしています。
■本学学生、受験生へのメッセージ
小原: 最後に学生や受験生に伝えたいことがあればお願いします。
地家: 学ぶだけでなく遊ぶことも重要な経験です。すぐに結果につながらない、一見無駄に思われる時間を過ごすこともポジティブに捉えて、日々を大事に過ごしてほしいと思います。
小原の感想:
地家先生からは、上記以外にも公衆衛生学について色々教えていただいて、その内容はとても興味深く、また現代社会には重要な学問分野であることを改めて認識しました。先生が目を輝かせてご自分の研究とその周辺分野について語られるのを聞いて、私も公衆衛生分野の研究の魅力に惹きこまれました。地家先生から教えを受けた多くの学生が、この分野の面白さに共感し、学び、研究する楽しさを味わってほしいと思います。
<地家真紀先生の研究室にて>