2022年7月25日学長ブログ

7月9日(土)「夏目漱石 修善寺の大患前後-昭和女子大学図書館近代文庫蔵 新資料を加えて-」出版記念講演会が本学の近代文化研究所主催で開催されました。本書は、本学創立100周年を記念して近代文化研究所所員の5名の本学教員によるプロジェクト研究の成果として刊行されました。内容は、本学図書館の近代文庫に含まれていた、漱石の修善寺における大患に関わる新しい資料(修善寺菊屋旅館の領収書、修善寺大和堂医院の領収書、坂元雪鳥筆の「計算方針」)を翻刻し、これに加えて、近代文学研究叢書17巻の漱石の「資料年表」を始めとして漱石著の「思い出す事など」、日記、書簡、周辺関係者の残した文章、当時の新聞雑誌の報道などを調査し、修善寺の大患前後の漱石および周囲の人々の動静について記述されたものです。

夏目漱石といえば、日本全国の中高生が国語の教科書で必ず学び、誰もが知っている明治時代の文豪です。本書には、修善寺に療養に行った漱石がさらに病状が悪化し衰弱していく姿や言動、漱石を敬愛する弟子たちの心情や看病の様子、周囲の人々の支援、鏡子夫人の行動などが詳細な調査に基づいて書かれています。これを読み進むうちに、衰弱した漱石や周辺の人々の姿がまるで現実に見ているように生々しく浮かびあがってきます。それがこの本の力であり、プロジェクトメンバーの努力の成果であると思います。

この会でご講演いただいた、漱石研究の第一人者の石﨑等先生(立教大学名誉教授)も、この書籍はこれからの漱石研究には欠かせない資料となるだろうと評しておられました。このプロジェクトに携わった5名教員の研究成果に称賛を送ると同時に、近代文化研究所が引き続きこのような本学所蔵の貴重資料を利用した研究プロジェクトを実施し、その成果を社会に発信していくことを期待します。