2022年5月23日学長ブログ

<教職員インタビュー>
今日は歴史文化学科の三原昌巳専任講師に、先生の研究を中心にお話を伺いました。

■研究分野、内容について
小原: 三原先生の研究分野について教えてください。
三原: 地理学は大きく分けると、地形や気候などを対象とする自然地理学と経済や産業、文化などの人文事象を対象とする人文地理学があります。私の専門分野は人文地理学です。具体的には医療・健康の地理学で、医療サービスの地域的な不均衡に関する研究を行っています。日本では、設備の整った大病院の多くは都市部に集中し、地方だと小規模な病院か、近くに診療所のない地域もあります。地域によって医療サービスに格差があることに疑問を抱き、その実情を調べたいと思いました。
フィールドワークが主で、例えば福島県の会津地方の山間部の住民を訪ね、どのような通院行動をとっているかを聞き取りし、調査結果からその地域特性を調べます。高齢者でも通院に高速バスを利用したり、医師不足の地域の医療機関が新幹線通勤の非常勤医師でやりくりしている事例があります。医者も患者も広域移動する時代で、医療格差は是正されるのかを検証していきたいと考えています。最近では,医療ツーリズムに代表されるような医療・健康分野と観光とのつながりや地域活性化にも関心をもち、研究を進めています。
小原: 地理学と言っても、中学・高校生時代に勉強した、どこの場所にどういう産業や産地があるとか、何県の県庁所在地はどこかなどということとは全く異なり、人の行動と地域の関係性を明らかにする分野なのですね。このほうがずっと面白そうですね。

■研究の醍醐味について
小原: 先生の研究で楽しい、面白いと思うところを教えてください。
三原: やはり旅ができることです。そして調査のなかで現地の人との出会いが楽しいです。調査してデータを持ち帰らねばという気持ちで、頑張って積極的に色々な人に声をかけると自分の世界が広がります。会津の調査では自家製の野沢菜漬けをいただいたり、現地の美味しいお土産などをいただくことも調査の醍醐味です。地理学は年齢を重ねてもよい研究、新しい研究ができる可能性があり、地域を見る目も経験で養える楽しい研究分野です。
小原: 先生が地理学に進むきっかけはどのようなことだったのでしょうか。
三原: 大学は教育学部で日本語教師を目指していましたが、入学オリエンテーションで小さなアンケートに「地理が好きです」と一言書いたため、地理学専門の教授が暫時的な担当教授(アドバイザー的役割)に決まり、結局3年次にもその先生の研究室を選びました。
ただ、以前から社会問題を分析して提示するような、世の中の役に立つ研究をしたいと思っていたので地理学に向いていたのだと思います。先日小学校時代のノートが出てきたのですが、好きな科目に「社会」と書いていました(笑)。
小原: 入学時のアンケートに地理が好きと書いてしまったのが運命の分かれ道だったようですが、実は先生自身の志向が元々地理学に向いていたのですね。

■趣味、好きな言葉について
小原: 先生の趣味・特技や好きな言葉を教えてください。
三原: 趣味は旅行です。始めは友達と行っていたのですが、大学4次生ごろから1人で旅行するようになりました。年2回くらいは海外旅行をしていました。特技はテコンドーで黒帯です。大学院時代に韓国で日本語教師として2年間滞在し、その間にテコンドー教室に通いました。そこではテコンドーだけではなく、韓国文化や作法、韓国社会など色々なことを知ることができました。好きな言葉は相田みつを氏(詩集『にんげんだもの』の著書として知られる詩人・書家)の「道」という詩のなかで、つらい時こそ成長の時、「黙って歩くんだよ」という言葉です。

■本学の良い点について
小原: 昭和女子大学のどんなところが、学生にとってよいのか、一言お願いします。
三原: 教室内が私語もなく静かで、しっかり学びたい学生にはよい大学だと思います。また、TUJがキャンパス内にあり国際的な雰囲気で、場所も便利で様々な機会にアクセスしやすい点です。

小原の感想:
私の高校時代の一番苦手な科目は社会、特に地理だったのですが、三原先生の話を伺い、地理学は実は面白い学問なのだと初めて思いました。教科書のなかの「地理」と現実社会との関係が見えてきて、ようやく地理学の意味・意義に気づきました(かなり遅い気づきですが)。おそらく三原先生の医療・健康の地理学研究への情熱が私にも伝わったのだと思います。Society5.0時代のITやAI技術だけでなく、三原先生が取り組まれているような研究の成果も十分活用されてこそ、過疎化や地域格差など日本の社会課題の解決が可能になるのだと思いました。先生のこれからの活躍が期待されます

<三原先生の研究室にて>