<教職員インタビュー>
今回は大学院文学研究科文学言語学専攻/言語教育・コミュニケーション専攻、人間文化学部日本語日本文学科の近藤彩教授にお話を伺いました。
■研究の分野・テーマについて
小原: 近藤先生は文学研究科長で、主に博士後期課程と前期課程の学生の研究指導をされていますが、先生の研究分野とテーマについて教えてください。
近藤: 私の研究分野は「日本語教育、外国語教授法、協働学習」です。研究テーマは「日本人と外国人のビジネスコミュニケーション」についてで、大学院修士課程のころからこのテーマで研究を続けています。最近の科学研究費助成を受けているテーマは「外国人労働者の受け入れ環境の整備」で、日本語教育や教授法にとどまらず、外国人が職場で日本語を使う際のコミュニケーション上の問題や摩擦についても研究しています。コミュニケーションは双方向のものなので、日本人も外国人に対して平易なわかりやすい日本語を使う必要があり、外国人に対する日本語の使い方を考えましょうという趣旨の動画の制作にも関わっています。NHK Worldで「Easy Japanese for work」という外国人向けの番組の教材作成も制作しました。
■研究の醍醐味について
小原: 先生がこの研究を続けていきたい、楽しいと思うのはどんなところですか。
近藤: 高齢化が進んでいる日本ではこれからもっと外国人労働者が増えることが予想され、日本で働く外国人に対する日本語教育の必要性はますます高まってきます。そのようななかで私の研究から得られた知見が社会で実際に役立つこと、社会的意義があるところにやりがいを感じています。外国人が日本で働くには、日本語教育だけでなく、異文化コミュニケーションやビジネスコミュニケーションも重要と思います。また、単に語学力だけでなく、人と人が協働する力も必要です。たとえばグループ学習では、メンバーが協働するのが上手なクラスは結果的に語学力の上達が速いです。単に語学力だけなく、双方向にコミュニケーションがとれることが重要です。
小原: 確かに、語彙が豊富で読み書きが上手にできることだけでなく、積極的に人とコミュニケーションがとれるかどうかも、その人が外国でうまく働ける重要な要素になりますね。先生が日本語教育を学ぶきっかけは何だったのでしょうか。
近藤: 大学では英米文学を専攻し、卒業研究はアメリカ研究で英語の教員免許を取得したのですが、その後オーストラリア、ニューサウスウェールズ州のシドニー工科大学大学院に留学し、州立中学高校の日本語教員の免許を取得しました。帰国後も日本語や英語を教えていました。日本語を学ぶ人たちは日本での日常の習慣や企業の慣習等について様々な質問をしてくるのですが、その答は教科書のどこにもありませんでした。それが日本語教育について研究しようと思うきっかけの一つとなりました。その後、お茶の水女子大学大学院に入学し、「日本人と外国人のビジネスコミュニケーション」の研究を始めました。
小原: 外国人が日本に住むには、日本語だけでなく、日本の文化や習慣、日本人が当たり前としていることも理解する必要が確かにありますね。ところで先生の趣味や大事にしている言葉があれば教えてください。
■趣味、座右の銘について
近藤: 趣味は水泳と旅行です。旅行は国内外のどちらも好きですが、今までで好きだったところは、家族で住んだことのあるフランスアルザス地方のコルマールという歴史のある街です。デュッセルドルフに住んでいたこともあるのですが、そこもよかったです。
大事にしている言葉は、自然体と多様性です。それぞれの人の違いを認めると共に自分も自然体でいることを大事にしたいです。
小原: 多様性や自然体は、先生の外国人に対する日本語教育や先生の研究テーマに通じるものがありますね。それでは最後に、学生へのメッセージを一言お願いします。
■本学学生へのメッセージ
近藤: 私はテンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)と授業間で交流していますが、国の違う学生同士が交流を通して色々な考え方や文化に触れることができ、学ぶことがとても多いです。同じキャンパスにTUJのような全く異なる環境があることはとても価値があると思いますので、本学の学生のみなさんにも是非TUJの学生と積極的に交流してほしいと思います。
小原の感想:
近藤先生の話を伺って、今後の日本社会での日本語教育の必要性に加え、人々が異文化を理解する、多様性を認めることはこれからのよりよいグローバル社会の実現に向けてとても重要だと実感しました。近藤先生の教えを受けて日本語教育を実践していこうとしている学生には、是非頑張って活躍していただきたいと思いました。
なお、先生のお話しのなかにあったフランスのコルマールは、木骨組みの建築物がある旧市街が有名で、アニメの「ハウルの動く城」のモデルにもなったとのことでした。
(近藤彩先生と学長室にて)