日記を読もう!!

こんにちは、松田忍です。

今年度私が、2年生と4年生の必修科目として開講している日本史通論では、戦時期の日記をたくさん集めてきて読み比べ続けています。日本史通論の講義計画は心を込めて組んだものであり、うまく受講者のみなさまに授業意図が伝わればいいなぁと思いながら、いつも話しております。でも、まぁ、講義そのものの話は機会があればそのうち。

さて日本史通論の講義を進めるうちに、副次的効果(?)としてか「昔の日記読むのは結構面白いですね」という感想を伝えてくれる学生が2年生にも4年生にも現れてきました。史料にご興味をもつ学生がいらっしゃることについてはとても嬉しく思っています。

NHKの特番などで「歴史史料」というと、専門家らしき人が白手袋をして、うやうやしく捧げるように持ってきて、しかも暗闇の中で格好良くスポットライトをあてて紹介されるのが定番ですよね。確実に劣化してゆく存在である「歴史史料」を扱うときに細心の注意を払わねばならないのはもちろんです。しかしあのような映像ばかりみていると、史料とは一介の学生の手の届かないところにある遠い存在なんだ、と印象づけてしまわないかということが些か心配にもなってきます。

実は「歴史史料」とはもっと身近なモノだと私は思っております。

特に、近現代史を専攻するにあたって、みなさんのもっとも近くにある「歴史史料」の代表格が日記ではないかと思うのです。職業別にも、政治家、軍人、官僚、小説家、村長、農業経営者、教師、主婦……とバラエティに富んだ日記が読めますし、時代別にも、明治、大正、昭和……となんでもござれです。翻刻されて出版された日記については、昭和女子大学の図書館にも所蔵されておりますし、また岩波文庫などにはいっている日記であれば数百円で購入することもできます。ということで今日は日記のガイドブックを2冊紹介いたします。

まず一冊目は御厨貴編著『近現代日本を史料で読む―「大久保利通日記」から「富田メモ」まで』(中央公論新社、2011年)です。この本は日本近現代政治史の研究者たちが力をあわせて史料紹介をした本であり、日記を中心とする四十数点の歴史史料が魅力たっぷりに紹介されています。日本近現代史をやってみたいなぁと思っていらっしゃる学生にお薦めします。

もう一冊は荒川洋治『日記をつける』(岩波現代文庫、2010年)。こちらは詩人である著者が近現代の日記の読みどころを優しく解きほぐして解説している本で、まるで語りかけられるような平易な書き口が特徴です。日本近現代史を専攻するつもりはあまりないのだけど、日記がちょっと気になっています、という方に推薦します。

以上、日記に私たちを誘ってくれる道しるべとなる本を二冊ご紹介いたしました。