過去への扉、伝記

こんにちは、日本近現代史担当の松田忍です。

「大学に入ったら、日本史をやりたい」あるいは「3年生になったら日本史のゼミに入りたい」、「でもそのために何をしたらいいんだろう?教科書を覚えればいいんだろうか?それとも日本史の問題集を解けばいいのだろうか?うーん、でもなにか違う、イメージが湧いてこない。テーマが見つからない」・・・そんな悩みを抱えている人はいらっしゃいませんか。

もちろん知識をつけることは、とても大事です。しかし、興味を持って過去のある時点にタイムスリップするためには、私は史料から勉強を始めることを強く強くオススメいたします。

史料といいますと、歴史のプロだけが触れることを許される遠い存在のような印象をもたれるかもしれませんが、実際のところ史料は私たちの身の回りにごろごろ転がっています。

たとえば伝記。伝記というと、野口英世とかヘレンケラーのように子どもの頃に読むものであって、高校生や大学生が読むものではないと思っていませんか?

そんなことは決してありません。研究者たちも競って読んでいるのが伝記であって、伝記は歴史へと旅立つための、一番身近な史料なのです。

たとえば平凡社から出ている『日本人の自伝』シリーズなどはいかがでしょうか。大きな図書館にはたいてい入っています。知らない人であったって構いません。まずは手にとって読んでみましょう。

岩波文庫にも魅力的な伝記がたくさん入っています。青いラベルのついた本を探してみましょう。山川菊栄の『武家の女性』などはいかがですか。幕末期の女性の暮らしが手に取るように伝わってきますよ。先日学生に貸し出したら「もう読んじゃいました、面白かったです」とすぐに返ってきました。読みやすくて面白い伝記です。

岩波新書のほうも伝記の宝庫ですね。岡義武『山県有朋』などはいかがでしょう。幕末に志士として活躍した人間がどうやって新国家の中で派閥を築き、のぼりつめていったのかを緻密に記した伝記です。みなさんご存じの大隈重信と山県有朋は、同じように総理大臣を務めた後、大正時代に一ヶ月くらいの差で無くなっているのですが、大隈重信の葬式の方は、国民が大勢詰めかけ、大騒ぎの中に見送られることとなるのですが、山県有朋は人が集まらずとっても寂しい葬式となる。同じく明治維新をなしとげた偉人でありながら、なぜそんなにも差がついたのか?知りたくありませんか??

歴史に興味があるというかた、是非伝記で過去への扉を開いてみましょう。