ヌルヌル

こんにちは
今日の話しは、ベタベタの話し。いえヌルヌルの話しです。
先ほど、昭和の泉の脇で育てていた、トロロアオイの根を収穫してきました。
トロロアオイは和紙を漉く工房にとってとても大事な植物です。
家庭用の風呂より小さな水槽に水をたっぷり、楮センイも入れて良くかき混ぜます。
センイ同士が集まってしまって、いわゆるダマ状態にならないように。
でも、センイ同士は仲良しなのでどうしても集まりやすい。ダマダマのまま紙漉きを
すると、出来上がりが凸凹の多い紙になってしまいます。
そこで登場。トロロアオイの根っこ。
根っこを槌などでつぶして水に漬けておくと、ヌルヌルの液が出てきます。
そのヌルヌルを水槽に入れて良きかき混ぜると、センイ同士はつかず離れず、まことに
理想的な友好関係を保ち、ダマにならず、均一に分散して、なおかつ、センイが沈殿する
のが抑制される効果もありなのです。
その状態で枠に挟んだ竹の簾で掬いあげると、水は簾の隙間から流れ落ち、センイだけ
が簾の上に残って、紙となるのです。その時にもトロロアオイの効果が絶大で、ヌルヌル
のお陰で水が流れ落ちる速度が遅くなり、しばらくセンイと水は一緒に簾の上に居てくれ
る。その間、紙漉さんは簾を挟んだ枠を前後に揺すって、センイがきれいに並ぶように
し向けます。ですから、和紙を日に透かしてみるときれいなのですよ。

このヌルヌルが、ベタベタやニチャニチャの糊と違うのは、やがて自身が分解されて、
漉き上げた紙を重ねて置く間に効力を失い、脱水乾燥する際には、紙同士を貼り付かせ
るようなことはしないのです。出番と退出のタイミングをわきまえた名補助役なのです。

花はきれいな黄色、大きめのハイビスカスに似ています。実はオクラとうり二つ。漢字では
黄蜀葵と書きます。

画像を入れるのが面倒なので、花に興味がある人は、インターネットでトロロアオイの
キーワードで覗いてみて下さい。増田勝彦