歴文生の夏休み その3 ~~美術館での館務実習の巻~~

「歴文生の夏休み」第3弾は、学芸員課程・館務実習のレポートです。

歴文には各学年に約100名の学生が所属しているのですが、その半数ほどが学芸員資格の取得を目指します。資格を目指すすべての学生が4年生の夏に、実習を希望する美術館、博物館にお願いをして、館務実習を受けることになっています。

実習先は大きく分けて美術館系博物館系分かれるのですがまずは世田谷美術館の館務実習を受けてきた木名瀬さんに記事執筆をお願いいたしました。 館務実習……どんな体験なのでしょうか!?

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歴文ブログをご覧の皆様、はじめまして。歴史文化学科四年の木名瀬と申します。

 

今回、博物館学芸員科目の館務実習について、私の体験談を交えて紹介していきたいと思います。

 

この記事が、今後館務実習を行う歴文生の参考になれば幸いです。

 

私は、世田谷区は砧公園内にある「世田谷美術館」で館務実習を受けました。歴文生や受験生のみなさまのなかにも、訪れたことのある方は多いのではないでしょうか。三軒茶屋駅からも近い用賀駅から徒歩約15分の場所に位置する、砧公園の緑に囲まれた美術館です。

 

世田谷美術館では、開館以来、教育普及活動の一環として、世田谷区立の全小学校4年生を対象とした美術鑑賞教室を行っております。ここでは、ボランティアの方々が「鑑賞リーダー」となり、世田谷美術館を訪れた小学生に美術や美術館に対して親しみをもってもらえるよう案内していきます。

 

美術鑑賞教室といっても、ギャラリートークのように、美術作品の概要を事細かに解説していくわけではありません。あくまでも、美術館を好きになってもらう事が一番の目的なのです。

 

世田谷美術館での館務実習は、自らこの鑑賞リーダーとなって、美術鑑賞教室に参加することが主な内容でした。美術館を楽しんでもらうことが第一、とは言っても、こうした教育普及活動に関わることが今までなかったため、初めはかなり戸惑いました。

 

鑑賞リーダーは、美術鑑賞教室で来館した団体を3人から8人程度のグループに分け、展覧会及び美術館の案内をしていきます。美術鑑賞教室が始まる前に、担当学芸員の方から美術館でのマナー(館内を走らない、さわがない、展示品に触らない、等)について説明されてはいるものの、相手は小学4年生。館内で友達に会っておしゃべりをする子、別のグループについて行ってしまう子、展示品に手をついてしまう子…約束を完璧に守れる生徒ばかりではありません。鑑賞リーダーになった当初は、グループを一つにすることに必死で、子供たちと一緒に美術館を楽しんでいるとは言えない状態でした。

 

それでも、美術作品を見た子供たちの反応は、とても興味深いものばかりでした。私が生徒に対して「帰るまでにこの美術館の中でいいなと思う作品をひとつでも見つけてね」と問いかければ、自分のお気に入りを見つけるために食い入るように展示品を見ていきます。それも、ただ何となく好きなのではなく、「あの作品のこの色が綺麗だから」「見ていると楽しい気持ちになるから」と、ちゃんとした理由を持って好きだというのです。

 

子供たちと一緒に美術館を回っていると、新たな発見が次から次へと現れます。そうしたひらめきを誘導するのが鑑賞リーダーの役割であると思うようになってからは、子供たちと一緒になって、美術鑑賞教室を楽しめるようになりました。

 

私の体験談を読んだ人の中には、これのどこが館務実習になるのだと思った方がいるかもしれません。

 

しかし、世田谷美術館の教育普及活動に従事したことで、学芸員にとって最も重要である「もの」と「ひと」を繋げる活動に自ずと貢献できたと感じております。

 

学芸員の使命は、博物館や美術館を、人々の教育活動や文化の発展に役立てることです。展覧会の企画をしたり、美術品の取り扱いを学んだりすることは、学芸員になるためにはもちろん必要ですが、それがどのような形で人々の役に立つのかを実際に見聞きするためには、現場に自ら立つことが一番なのではないでしょうか。

 

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≪実習の内容≫

 

実習場所:世田谷美術館

 

実習期間:2012/4/24~7/13のうちの10日間

(事前講義、勉強会、反省会3日、美術鑑賞教室5日、ワークショップ手伝い2日の計10日間)

 

実習期間中の展覧会:「駒井哲郎展」

 

戦後日本の銅版画のパイオニアとして知られる駒井哲郎(l920‐1976)による画業を、駒井を敬愛する資生堂名誉会長の大コレクションにより紹介していく企画展。展示作品は世田谷美術館に寄贈されたものであるため、今後も世田谷美術館で展示されていく予定です。

 

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木名瀬さん実習レポートありがとうございました!!お世話になりました世田谷美術館のスタッフのみなさまにはこころより感謝申し上げます。

美術館での振る舞い方を身につけること、そして「好きな作品を探してみる」というような自分から働きかける気持ちで鑑賞すること、双方をしっかり身につけた子どもたちにとっては、美術作品がもっと身近なものになっていきそうですね!とても大事な経験をおつみになったことと思います。

「もっと深く学びたい」と思える作品をみつけ、美術史を学ぶために歴史文化学科に入学してくる学生は少なくありません。高校生のみなさんも是非美術館、博物館に足をお運びになって、素敵な出会いをみつけてくださいね!歴文では西洋美術史も日本美術史も学ぶことができますよ!!