はじめまして!
この4月から歴史文化学科に着任した、小野寺拓也です。
担当は西洋史ですが、専門はドイツ近現代史、とくにナチズムです。
「なぜふつうのドイツ人はヒトラーやナチスを支持したのか」という問題を、様々な角度から研究しています。
というわけで最初の書き込みですので、本来でしたら私の専門や研究内容についてつらつらと書くべきなのでしょうが、それについてはおいおい紹介させていただくとして、今回は今日あった出来事についてお話ししたいと思います!
実はわたくし、大のクラシック音楽好き(通称:クラオタ)でもありまして、大学時代には大学オケで打楽器を演奏していました。ベルリン留学時代にも、毎日のようにコンサートホールや歌劇場に足を運ぶという、今考えても夢のような生活を送っていました。
というわけで、本日人見記念講堂にて開催される「春の名曲コンサート」も、着任したときからずっと楽しみにしておりました。
※ちなみに昭和女子大学では、「文化研究講座」として年に十数回、さまざまな催し物を学生などを対象に実施しています。フルオーケストラだけでなく、室内楽やピアノ・ソロ、オペラ、合唱、ミュージカル、落語など、さまざまな生の芸術に触れることができます。今回は、東京交響楽団をお招きしての、一年生対象の演奏会です。
そして、今日の曲目はこちら。
指揮:飯森範親
管弦楽:東京交響楽団(コンサートミストレス:大谷康子)
チェロ:新倉瞳
司会:朝岡聡
モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」序曲
ドヴォルザーク チェロ協奏曲
ベートーヴェン 交響曲第7番
<アンコール> モーツァルト ディヴェルティメントK.137より第三楽章
ヨーロッパ的な柔らかくて優雅な響きのする東京交響楽団は、とても好きなオーケストラで、個人的に時々聴きにいったりもするのですが、実はこのオケには私の「恩師」がいるのです。
セカンド・ヴァイオリンのA先生。
実は子供の頃、親に言われるままヴァイオリンをやっていたのですが、そのときヴァイオリンを教えていただいたのがこのA先生でした。
ただお恥ずかしいことに練習するのがだんだん嫌になり、小三でヴァイオリンはやめてしまったのでした。
先生には不義理をしてしまったわけです。
そんなわけで、「申し訳ない」という気持ちはいつも心のどこかにありました。
大学でオーケストラに入ったのも、「あのときやめてしまったものを、少しはやり直したい」という気持ちがあったのかもしれません。
一度は自分から投げ捨ててしまったクラシック音楽ですが、今では私にとってとても大切な趣味(というか趣味以上の何か)になっています。それもこれも、(当時は嫌々でしたが)A先生に植え付けていただいた「苗」があったからなのだと思います。
そして時は流れて30年後。
優雅な「フィガロの結婚」序曲に浸っていると、なんとステージ上にあのA先生がいるではありませんか。
着任したばかりの大学で久々にお見かけするというところに、何か運命的なものを 感じた私は、休憩時間にずかずかとステージ裏まで、先生に会いに行ってきました。
開口一番「大きくなったねえ」と言われました。確かに(笑)。
それ以外にも、この30年間どんな人生を歩んできたかをご報告してきました。
研究者としても人間としてもまだまだ未熟であることには変わりはありませんが、「この大学で4月から教員をやっています!」とご報告できたことで、ほんの少しだけですがご恩が返せたような気がして、なんだかほっとしました。
先生の恩というのは、たとえそのときには成果が見えなくても、たとえそのときには失敗したように見えても、実は脈々と息づいているのだということを、深く感じました。
ちなみに今日の演奏会。
ドヴォルザークのチェロ協奏曲では、ノスタルジーというか懐かしさで、ぎゅっと 胸が締め付けられる箇所がいくつもありました。
そしてベートーヴェンの7番。
よく「リズムの饗宴」と評されるこの曲ですが、単にノリや勢いで押し切るのではなく、「一緒に生きていこうよ」とやさしく語りかけてくるかのような演奏で、胸にしみました。
一年生の皆さんはオーケストラの演奏会が初めてという人も少なくなかったようですが、こうした演奏会を通じて、人生の支えとなるような「響き」に数多く出会ってもらえればなあと、心から願わずにはいられません。
ちなみに、一年生のみなさん。楽章間の拍手もなく、演奏中は静かに耳を傾けていました。素晴らしい!