オリエント史勉強するなら語学の学習を

古代エジプト史を専攻している吉成です。少し思い出話など。

高校時代から大学で古代エジプトの勉強をしたいと考えていたのですが、具体的なことが全くわからなかったために、思い余って古代オリエント史研究の第一人者だった明治大学の杉勇(すぎ・いさむ)先生にお電話を差し上げたのです。我ながら思い切ったことをしたもんだと思います。電話口で緊張し切っている私に先生は「英語出来るでしょうね。」と仰ったのでした。今もそうですが、本格的に古代オリエントの勉強をしようとすると、日本語の文献ではなく外国語の文献に頼るしかなく、横文字が読めなくては何も出来ないことになります。

大学を終えて大学院は杉先生が古代オリエント研究の基礎を作られた東京教育大学を受験したのですが、古代オリエント研究を目ざす受験生は英語、ドイツ語、フランス語(イタリア語とロシア語も入っていたと思いますが)の三ヶ国語を受験せよという条件がつけられていて杉先生のご意向がはっきり示されていました。私の大学時代は学園紛争華やかなりし頃で、大学の封鎖や授業ボイコットで一般教養の語学が充分に受講できない状況でしたので、ドイツ語は参考書を買って来て自分で基礎から勉強し、フランス語はお茶の水のアテネ・フランセに通って初歩から学びました。英語はE.H.カーのwhat is Historyのペリカンブックを買って、岩波新書の清水幾太郎訳とつき合わせながらカードを作って翻訳の勘どころを身につけようと勉強しました。

最近は年を取って余り勉強しなくなっていますが、ドイツ語とフランス語に関しては、NHKラジオの入門講座を毎朝聞いて刺激を継続させる様にしています。講座は4月から始まりますので、今は初歩の初歩の話が次から次へと出て来ますが、数詞についてちょっと気になったことがありました。昔、石原都知事だったか、フランス語の数詞はめちゃくちゃで非科学的で、数がまともに数えられないフランス人は駄目だという様な発言をしていたと思いますが、そういうことではなくて、11から20までの数の表し方についてです。ドイツ語とフランス語の11から20までを英語と対比させて書き出すと次の様になります。

11 elf―eleven―onze
12 zwoelf-twelve―douze
13 dreizehn―thirteen―treize
14 vierzehn―fourteen―quatorze
15 fuenfzehn―fifteen―quinze
16 sechzehn―sixteen―seize
17 siebzehn―seventeen―dix-sept
18 achtzehn―eighteen―dix-huit
19 neunzehn―nineteen―dix-neuf
20 zwanzig―twenty―vingt

これを見ると、10を表わす要素(zehn、teen、dix)が現われるのはドイツ語と英語では13から19まで、フランス語では17から19だとわかります。それが何なのだと言われても何とも言えないのですが、数詞の様な基本的語彙のレベルでは同じゲルマン語系のドイツ語と英語が同じでラテン語系のフランス語とは異なるということなのでしょう。 複雑で高等な語彙に関しては英語にはたくさんのフランス語と共通のものがあることは良く知られています。ちなみに辞書によると英語のelevenとtwelveは「10に残り1つ」「10に残り2つ」の意味だそうですが、ドイツ語やフランス語の場合はどうなんでしょう。調べてみて下さい。