晩秋の学内から

歴史文化学科の教員の掛川典子です。今週は、今年最後の紅葉の輝きに囲まれながら授業をしています。写真は毎日見ている研究館5階の東の窓からの景色(「昭和の泉」周辺)です。青空でも曇天でも雨でも、銀杏の金色の輝きが素晴らしいです。先日は雨の夕方、外灯に照らされる銀杏の落ち葉を踏みながら帰路につきました。なかなかの情緒です。都会のなかにいても、日本の自然の美しさが味わえているのです。
でも年々天候の異常さが増しているのも感じています。そして都市の景観も変わってしまう。だからこそ今年限りかもしれない美しい景色や風情を感謝しつつ味わいたい・・・。通勤途中の二子玉川の駅のホームから見る箱根の山々の向こうにそびえる富士山も、今週は真っ白に雪化粧しています。最近途中に高いマンションが複数建設され、立つ位置を選ばないと富士山は見えなくなってしまいました。以前はホームのどこからでも遮るものなく見渡せたのに残念です。今週は1年生と3年生が千葉県館山にある「望秀学寮」に行っています。そちらでも晩秋の海辺の雰囲気を堪能していることでしょう。

また今週は水曜日の夕方、人見記念講堂でウィーン管弦楽四重奏団のコンサートがありました。今年創設50周年を迎えられたそうで、第一ヴァイオリンのヴェルナー・ヒンクさんは元ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサート・マスターで、この四重奏団の創設メンバーでいらっしゃり、71歳とのこと。ヨーロッパに行く飛行機の12時間が少々耐えがたくなった私は、日本にわざわざ演奏に来てくださるこの方々のことを改めてすごい、と思ってしまいました。皆さん還暦以上なのですが、漆黒の燕尾服がとてもお似合いで格調高くて素敵・・・。弦楽器の音はほんとうに素晴らしい。個人的にはヴァイオリンのほかは特にチェロが好きです。今回は品良くやわらかく優しいチェロに聞こえました。ドヴォルザークの「アメリカ」には、昔ドイツに留学したての頃の自分の望郷の思いを重ねて聞いていました。たまらなくなり丘に夕日を見に行っていましたし、クラシックが好きな私は、よく大学のノイエ・アウラでのコンサートに通いました。シューベルトの弦楽四重奏曲「死と乙女」は難しい曲という先入観があったのですが、とても質が高い素晴らしい演奏に出会えた充実感がありました。学内にいて、授業の後すぐこんな素晴らしいコンサートを体験できる学生さんは本当に幸せです。本物の音を耳にしているのですから。若い皆さんには、美しいものに出来るだけたくさん触れてほしい、良い体験をできるだけ重ねてほしい、といつも願っております。